新型コロナウイルスによる肺炎の拡大が、日中間の外交日程に影を落としている。中国政府が対応に忙殺されているあおりを受け、4月上旬で調整中の習近平国家主席の国賓来日に向けた協議が停滞。日本側からは実現を危ぶむ声も漏れ始めた。

全人代延期の観測 新型肺炎、政治日程に影響―中国

 菅義偉官房長官は5日の記者会見で、習氏の来日について「予定通り行うべく準備を粛々と進める。日本から延期を求めることは想定していない」と強調。自民党幹部は「日中のトップが感染拡大防止に取り組むことで合意できればいい」と日中首脳会談の必要性を訴えた。

 日中両政府は年明け以降、習氏来日に向けた非公式協議を重ねてきた。今月も複数の会合を予定していたが、新型肺炎の影響で再調整を余儀なくされたものがあるという。習氏に先立ち、中国外交を統括する楊潔※(※=竹カンムリに褫のツクリ)共産党政治局員らの来日も予定しているが、具体的な日程協議は進んでいない。

 1998年9月に日本を訪れる予定だった江沢民国家主席(当時)は、中国国内で起きた大洪水に対処するため、日程を2カ月延期した。日本外務省幹部は「中国は今、感染症対応にかかりきりで、外交の話をできる状況ではないだろう」と推し量る。

 日本政府高官は5日、習氏を迎える準備は進めるとした上で「外交だから、状況次第で『ドタキャン』はあり得る」と指摘。別の高官は「先方から取りやめという話がない以上、こちらは準備を進めるしかない」と話した。