総務省は今朝、12月の家計調査結果を発表した。日経新聞によると「昨年10月に消費税率を引き上げ後の10~12月期で総世帯の消費支出は月平均24万7264円となり、前年同期比で4.7%減った。前回増税後の14年4~6月期(5.7%減)より落ち込みは小幅だった」としている。同紙は増税の影響をできるだけ小さく見せたいようだ。筆者がこの記事に手を入れるなら「消費増税の影響が顕著」と大見出しをつけるが、同紙は総務省の見方を引用、「駆け込み需要の反動減からの持ち直しの動きが維持されている」と消費の先行きを楽観視している。

日経新聞はマーケット重視の新市場主義経済運営の恩恵を一番多く得ている新聞である。低所得者よりは比較的所得の高い所得者層が同紙の最大の購読者層である。消費増税もおそらく賛成だろう。低所得者対策よりは財政再建に重きを置き、将来世代にツケを残さないことを重視している。社会保障改革に関しても、経費圧縮を目的とした受益者負担の拡大を支持しているのだろう。新聞社には新聞社の考え方があり、それはそれで結構だと思う。だが、消費の先行きは本当に楽観できるのだろうか。目先的には新型肺炎でインバウンドが大きく落ち込んでいる。それ以上に、今春闘での賃上げに多くは期待できない状況である。

その一方で社会保障の負担は増えている。平均的な家計は消費増税がなくても、支出が収入を上回っているのである。西村経済再生相はこの日の閣議後会見で、17日公表予定の10─12月期GDPについて、「個人消費低迷により前期比マイナスになる可能性がある」(ロイター)と早くも予防線を張っている。本音では消費増税の影響を懸念しているのだ。この予想は正しいだろう。1−3月期は新型肺炎の影響で多分マイナスになるだろう。そして春闘で定額回答が追い打ちをかける。今朝の新聞には4月からの診療報酬改定で大病院の入院料が5200円アップすると出ていた。「持ち直しの動きが維持されている」(日経)どころか、消費の底割れが心配になるというのが実感だ。