野沢茂樹、小田翔子
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2019年12月末時点の運用資産額は、168兆9897億円となった。米中の通商協議が最低限の合意に達するとの期待を背景とした世界的な株高と円安などが寄与し、18年9月末以来の過去最高を更新した。
GPIFが7日公表した運用状況によると、19年度第3四半期(昨年10-12月期)の運用収益率はプラス4.61%で、収益額は7兆3613億円増加した。このうち、国内債券は5四半期ぶりに運用損となったが、国内外の株式が大幅に上昇。外国債券は、米欧金利の上昇を受けた評価損を円安による円換算額の押し上げで補った。
10-12月期の運用収益と資産残高
運用資産の収益率 | 4.61% | 4四半期連続のプラス |
国内債券 | -0.96% | 5四半期ぶりのマイナス |
国内株式 | 8.58% | 2四半期連続のプラス |
外国債券 | 0.86% | 4四半期連続のプラス |
外国株式 | 9.73% | 4四半期連続のプラス |
昨年12月末の運用資産額 | 168兆9897億円 |
自主運用を始めた01年度からの累積収益 | 75兆2449億円 |
GPIFは来年度からの中期計画に向けて基本ポートフォリオの見直しを進めている。市場などへの影響を考慮し昨年7-9月期の運用成績から、内外債券・株式別の保有額や構成比、四半期ごとの収益額を非公表とした。7-9月期と10-12月期の同項目は7月に公表する予定の19年度の運用成績と併せて明らかにする。
高橋理事長の説明と市場の声
GPIFの高橋則広理事長は公表資料で、米中貿易協議の進展などから国内外の株式市場が大幅に上昇したほか、世界的に金利は上昇したが為替市場では対ドル、対ユーロとも円安が進行した、とコメントした。
ニッセイアセットマネジメント債券運用部の三浦英一郎リードポートフォリオマネジャーは、GPIFは株式や外貨建て資産が多いので株高・円安局面で運用益が上がる傾向にあると指摘。米大統領選では現職のトランプ氏が有利とみられ、今後も緩やかな株高・円安基調が続きやすいと予想した。1ドル=118円程度まで円安・ドル高が進む場面もあるとみる。
一方、三菱UFJ国際投信戦略運用部の石金淳チーフストラテジストは、GPIFの運用益は「素直に株高と円安の影響」だが、この先も円安が続くと期待するのは難しいとみている。