新型コロナウイルスに関する専門家会議は19日、最新の「状況分析・提言」をまとめて公表した。内容を要約すれば「(日本は)引き続き、持ちこたえていますが、一部の地域で感染拡大がみられます」というもの。最近は感染源を特定できない罹患者が増えており、「いつか、どこかで、爆発的な感染拡大(オーバーシュート=爆発的患者急増)が生じ、ひいては重症者の増加を起こしかねません」という危機感が色濃く滲んでいる。ひと言でいえば安心するな、危険はむしろ徐々に高まっていると強調する内容である。だから自治体も国民も「行動変容」を通して感染の拡大防止に努めてほしいとい訴えている。
一部地域に含まれるのが大阪と兵庫。3連休を前に両知事の間だ微妙な駆け引きが行われた。吉村府知事が専門家の試算した非公表の資料を公開して、3連休中の大阪・兵庫間の往来自粛を呼びかけた。これに対して井戸県知事も府に足並みは揃えたものの、「府から事前に相談はなかった」(読売新聞)、「大阪はいつも大げさ」(同)と感情的に不満を露わにしていた。専門家会議が指摘しているのは地域におけるオーバーシュートの可能性である。新型コロナは大阪府とか兵庫県といった、人為的に線引きされた行政区域を無視して拡大する。これに対して県と府は行政区域にこだわっている。双方が協力して見えない敵に立ち向かわなければいけないのだが、政党が異なるということか、政治の愚かしさを露呈する一幕でもあった。
専門家会議が強調するのは政治家や国民の「行動変容」である。聞きなれない言葉だが、要は感染防止に向け自らの行動を変えてくださいという呼びかけである。手を洗い消毒をし、換気の悪い密閉空間、多くの人が密集する空間、近距離で会話や発生が行われる空間に近づかないようにする。要は「うつらない」、「うつさない」ための行動を自らとって欲しいという要請だ。中国は強権的に人々の行動を抑圧して感染防止を行い、欧米は行動変容が浸透しないために非常事態宣言を出している。日本のいいところは人々が率先して行動変容を受け入れている点だ。だが、この週末、さいたまスーパーアリーナでは政府や県の要請を無視して「Kー1」のイベントが実施された。行動変容の要請が効かなくなってきた。