新型コロナウイルスの対策について話し合う政府の専門家会議が開かれ、医療現場が機能不全に陥ることも予想されるとして、医療崩壊を防ぐための対策をとるよう求めました。

政府の専門家会議は1日、10回目の会合を開き、座長を務める国立感染症研究所の脇田隆字所長らが出席し提言をまとめました。

この中では現状について、都市部を中心に感染者数が急増しているものの今のところ諸外国のような爆発的な患者の急増=「オーバーシュート」はみられていないとしています。

その一方で医療供給体制がひっ迫しつつある地域が出てきていて、「クラスター感染」が頻繁に報告されている現状を考えれば、爆発的な感染拡大が起きる前に医療現場が機能不全に陥ることも予想されると指摘しています。

その上で、東京・神奈川・愛知・大阪・兵庫のあわせて5つの都府県ではきょう、あすにでも抜本的な対策を講じることが求められ、それぞれの病院の役割に応じ総力戦で医療を担う必要があるとしています。

一方、学校については、まず、現時点で子どもが地域において感染拡大の役割を果たしていないと考えられるとしていて「季節性のインフルエンザとは違う」としています。

また、全国一斉の臨時休校の効果について、専門家会議のメンバーは「大規模な自粛と重なったため、その効果は定量的にはわからない」と述べていて、提言では、地域や生活圏ごとのまん延の状況を踏まえて対応していくことが重要だとしています。

そのうえで、感染拡大の警戒地域では学校の一斉臨時休業も選択肢として検討すべきだとしています。

1日の会合のあと記者会見に出席した専門家会議の脇田隆字座長は提言の中で、流行状況に応じて3つの段階に分けて地域ごとに対策を進めるよう求めたことについて、少なくとも東京と大阪は感染者数の増加状況などから3つの段階の中でもっとも厳しい対策が必要となる「感染拡大警戒地域」にあたるという認識を示しました。

脇田座長は「地域がどの段階にあるのかは自治体が判断すべきことだが、東京、大阪以外の地域についても厚生労働省を通じて自治体が感染状況を適切に判断できるよう助言を行うなど支援をしていきたい」と話していました。

また、会見では特別措置法に基づく「緊急事態宣言」が行われる可能性について専門家会議の副座長で地域医療機能推進機構の尾身茂理事長が「今はまだ患者の爆発的な増加が起きている状況ではないが、そうした状況になってから宣言を出すための準備を始めるのでは遅い。緊急事態宣言を出す目的やどのような事態になると宣言を出すべきなのかなどについて多くの人にとってわかりやすい考え方をあらかじめ示しておく必要がある」と指摘しました。