Richard Beales

[ニューヨーク 13日 ロイター BREAKINGVIEWS] – ソフトバンクグループ(9984.T)は来月、15年ぶりの通年赤字決算を発表することになる。主因はハイテク企業投資の大型ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の運用で損失が膨らんだことだ。 

ビジョン・ファンドにも孫正義会長兼社長が掲げてきた「経営ビジョン」にも、この損失が致命的になることはないだろうが、ほかのいくつもの出来事とあいまって、孫氏の信奉者の信頼は揺るがすはずだ。 

ソフトバンクGは13日、ビジョン・ファンドが2020年3月期決算で1兆8000億円(約170億ドル)の評価損を計上すると発表した。ビジョン・ファンド以外の投資先でも約7000億ドルの営業外損失も計上する。 

ビジョン・ファンドの損失には共有オフィス「ウィーワーク」を運営するウィーカンパニーでの昨年の大規模な減損処理が含まれる。しかしビジョン・ファンドの損失のうちの約100億ドルは、今年1─3月期に新たに発生したものだ。 

新型コロナウイルスの市場への影響を考えれば、意外感はまったくない。Breakingviewsの試算によると、ビジョン・ファンドの今年に入ってからの評価額の減少分は、昨年12月末時点での適正価値の10%分をやや上回る。ソフトバンクGは詳細を明らかにしていないが、これはほぼ、今年1─3月のナスダック総合指数の下落率である13%に匹敵する。 

2020年3月期の通期で見ると、ビジョン・ファンド以外の投資先では大きな位置を占める中国アリババ(BABA.N) (9988.HK)の株価が、わずかながら上がっていることは注目に値する。この1─3月の荒れ相場をもってしても、アリババ株が前年比で値上がりしているというのは特筆すべきことだ。 

わずか1四半期の不調によって、長期的な可能性を持つハイテク企業への投資が価値を生むという孫氏の理念が否定されるわけではない。しかし、昨秋のウィーカンパニーの新規株式公開失敗は、新型コロナがやってくる以前に、孫氏への信頼感を損なっていた。 

この先も投資家にとっては気が散ることばかりだ。「物言う投資家」エリオット・マネジメントから経営改革を突きつけていることから、ウィーカンパニー幹部による訴訟に至るまで、枚挙にいとまはない。 

英紙フィナンシャル・タイムズによると、市場急落を受けて孫氏は自分への貸し付けの担保として、保有するソフトバンクG株の60%を銀行に差し出すことになった。ライブミントによると、孫氏は、別の経営不振の投資対象であるインドのホテル運営オヨ・ホテルズ・アンド・ホームズの創業者に対しても、個人的に銀行融資を保証している。 

いずれも孫氏の投資へのコミットメントを示す例だが、同時に、「ビジョン」を見極める孫氏の力が限界に達しつつあることも示唆する。ビジョン・ファンド第2号に投資家をつなぎ留める上でも同氏の信頼感は不可欠だが、その信頼感はさらに薄れつつあるかもしれない。 

●背景となるニュース 

*1000億ドル規模の傘下ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」は、ハイテク企業への投資が不振で、1兆8000億円(170億ドル)の投資損失を出す見込み。 

*同ファンドの3四半期連続の損失により、ソフトバンク・グループの通期営業損益は1兆4000億円の損失となる見込み。

*ソフトバンクGはビジョン・ファンド以外でも、衛星通信ベンチャー企業のワンウェブやウィーカンパニーへの出資などで8000億円の営業外損失を計上する見込み。ワンウェブは、ソフトバンクGが追加資金の提供を拒否したため先月、連邦破産法11条の適用を申請した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)