政府は、開発中の抗ウイルス薬「レムデシビル」を新型コロナウイルスの治療薬として、早ければ5月上旬にも承認する方針を固めた。海外での承認を前提に、緊急時に国内の審査を簡略化できる医薬品医療機器法の「特例承認」制度を適用する。
安倍首相は27日の衆院本会議で、「間もなく薬事承認が可能となる見込みだ」と述べた。承認されれば、国内で初めて一般的に利用できる新型コロナウイルス治療薬となる。政府は、重症者向けに使用することを想定している。
レムデシビルを巡っては、米国立衛生研究所(NIH)や日本の国立国際医療研究センターなどが共同で、新型コロナウイルスへの効果を検証するための治験を行ってきた。
ドイツや米国で近く承認される見通しで、国内で申請されれば、政府は特例承認の手続きに入る。厚生労働省の関係審議会での意見聴取を踏まえ、承認される見通しだ。
特例承認は、〈1〉国民の生命及び健康に重大な影響を与える恐れがある疾病が蔓延し、緊急に使用する必要がある〈2〉日本と同等の審査水準がある外国で承認されている――ことを条件に、通常は1年ほどかかる審査期間を短縮して承認できる制度だ。
現在は治験に使う以外にレムデシビルの在庫はほとんどないとされるが、政府高官は読売新聞の取材に、「日本も治験に貢献しているので一定の割り当て分がある。米国から調達できる」との見通しを示した。
一方、政府は、軽症者には治験や観察研究を行っている新型インフルエンザ治療薬「アビガン」を使用できるようにする考えだ。首相は27日の衆院本会議で、「すでに2000例以上の投与が行われ、症状改善に効果があったとの報告も受けている。可能な限り早期の薬事承認を目指すべく努力をしている」と述べた。
◆レムデシビル=米製薬会社ギリアド・サイエンシズがエボラ出血熱の治療用に開発していた未承認の抗ウイルス薬。新型コロナウイルスの治療薬として承認を目指し、同社による企業治験とNIHによる医師主導治験が進む。投与された53人のうち約7割で呼吸状態が改善したとの研究結果を、日米欧などの研究チームが発表している。