[ニューヨーク 1日 ロイター] – ニューヨーク外為市場では、安全通貨と見なされる円に買いが入った一方、豪ドルなどのリスク通貨が下落した。米トランプ政権が新型コロナウイルス感染拡大を巡り中国に対する報復措置を検討する可能性があることが関係筋の話で明らかになったことを受け、リスク選好度が低下し、安全資産に資金が流れている。 

米当局者を含む複数の関係筋によると、新型ウイルス感染拡大を巡り中国に対する報復措置を検討する動きが米政権内で出ており、中国への制裁発動や、新たな関税またはその他の貿易制限のほか、国家は外国の裁判権に服さないとされる国際法上の「主権免除」を中国に対し認めない措置などが検討されている。 

トランプ大統領は米国でも死者が増大している新型ウイルスの感染拡大を巡り中国に対する非難を強めており、感染拡大を受け中国との通商合意の重要度は後退したとの認識をこれまでも示している。 

アクション・エコノミクスは「トランプ大統領が感染拡大を巡り中国を非難し、新たな関税発動の可能性をちらつかせたことで、株式市場で見られていた良好なムードが冷え込んだ」と指摘。「市場が『リスクオフ』となったことで、(安全通貨と見なされる)円がアウトパフォームする一方、コモディティー通貨はアンダーパフォームした」と述べた。 

JPY=は対ドルで0.29%高の106.86円。豪ドルは対米ドルAUD=で1.54%安の0.6410米ドルとなった。リスク選好度の低下を受けカナダドルCAD=も売られ、対米ドルで0.94%安となった。 

中国人民元も対ドルCNH=で下落し、オフショア市場で7.1378元と、4月2日以来の安値を付けた。 ユーロは対ドルEUR=で0.17%高の1.0974ドル。一時は1.1017ドルと、4月1日以来の高値を付けた。 主要6通貨に対するドル指数=USDは0.04%低下の99.08。 

この日は欧州とアジアの市場の多くがメーデーの祝日のため休場だった。 

MUFGの調査部門責任者、デレック・ハルペニー氏は「新型ウイルス感染拡大が及ぼしている影響の規模を踏まえると、ロックダウン(都市封鎖)などの感染抑制策が緩和されるに従い、地政学的な緊張が高まるリスクは当然増大する」とし、「将来的に世界的な通商問題の新たな火種となる」と指摘。ドイツ銀行の外為ストラテジスト、ジョージ・サラベロス氏は米国が政治的意図を持って中国に対する資本規制を導入した場合は、「明らかにドル売り要因となる」と指摘。「外貨準備がドルからユーロ、円、英ポンドなどにシフトする可能性がある」と述べた。