台湾問題は米中問題の「核心」と化した


近藤 大介『週刊現代』特別編集委員
プロフィール

台湾の参加を巡る「場外戦」

「この間のWHO(世界保健機関)の新型コロナウイルス対応に関する貢献を高く賞賛する。中国は今後とも、公開、透明、責任ある態度で、世界運命共同体に尽くしていく……」

日本時間の5月18日19時から、WHO総会が始まった。と思いきや、いきなり習近平主席の開幕演説! 何だかこの国連機関が、CHO(中国保健機関)に生まれ変わったように見えてきてしまった。

習近平主席としては、5月22日から始まる全国人民代表大会に備えた「国内向けアピール」をしたかったのかもしれない。もちろん、世界に対して感染源としての負い目を掻き消し、中国の「貢献」をアピールする意味もあったろう。だが、もっそりとした演説の中に、「台湾」に対する言及はなかった。

WHO総会は毎年この時節に開かれているが、今年ほど注目されたことはない。

それは言うまでもなく、新型コロナウイルス問題への対応策を、世界の専門家や関係機関の人々が話し合うからだ。「3密」を避けるため、WHO本部のあるスイスのジュネーブに集まるのではなく、本部のテドロス・アダノム事務局長らと、194ヵ国・地域とを、テレビ電話を繋いで会議を行っている。かつ議題は新型コロナウイルスのみとし、期間も2日間に短縮した。

だが、参加した194ヵ国・地域の中に、台湾は入っていなかった。台湾をオブザーバーとして参加させるかどうかを巡って、開始前から中台の、というより米中の激しい「場外戦」が繰り広げられたが、結局、中国側が拒絶を貫いたのである。gettyimages

WHOは計15ある国連の専門機関の一つだが、国連において、中国(中華人民共和国)と台湾(中華民国)の立場が入れ替わったのは、1971年のことだ。

これは、米リチャード・ニクソン政権が中国側に寝返ったことが決定打となった。中国の協力を得てベトナム戦争を早期に終結させる、中ソ離反を図る、中国ビジネスに乗り出すといった理由のため、台湾を犠牲にしたのである。仰天した日本もアメリカの流れに乗っかり、台湾は国連から脱退した。

その後、台湾は1993年から毎年、世界に点在する友好国を巻き込んで、秋の国連総会で台湾の国連復帰を求める提議を行ってきた。中国も反対票をまとめようと必死になるため、毎年の総会では否決されることになるが、台湾側も存在感を示すことにはなっていた。

ところが、2008年に台湾で国民党の馬英九(マー・インジウ)政権が発足した時、中国と台湾は「取引」を成立させた。それは、台湾が「一つの中国」を認め、秋の国連総会の場で復帰を提議するパフォーマンスを行わない代わりに、中国は台湾が一番望んでいたWHOの総会に、オブザーバーとしての参加を認めるというものだ。

台湾は、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)で346人の感染者と73人の死者を出したが、ここまで感染が広がった最大の原因は、WHOの情報を得られなかったことだと総括していた。そのため、オブザーバーとしてのWHO参加を、当面の最大の外交課題にしてきた。

こうしてようやく国連の「重い扉」をこじ開けた台湾だったが、2016年に台湾独立志向の強い蔡英文(Cai Yingwen)民進党政権が発足し、「一つの中国」を拒否。すると中国は、再び翌年のWHO総会から、台湾を閉め出してしまった。

ところが今回、皮肉なことに、昨年12月31日、WHOに真っ先に、「武漢でヒトからヒトへの大変なパンデミックが起きるリスクがある」と警告したのは、参加が認められていない台湾だった。そしてパンデミックを予期した台湾は、どこよりも早く、空港検疫の強化などの対策を始めたのである。

台湾の攻勢に乗ったトランプ政権

5月18日現在、台湾の感染者数は440人、死者7人。特に、国内感染者はわずか55人で、ほとんどが海外から帰国した際、空港で陽性が見つかっている。

2370万人という人口を考えれば、これはまさに「台湾の奇跡」と呼ぶべきものだ。ちなみに、人口で台湾の約5.3倍の日本は、感染者数で台湾の37倍、死者数で104倍である。

台湾で「奇跡の4人組」と言えるのが、「NO CHINA」を早期から断行した蔡英文総統、「総合プロデューサー」として対応を指揮したウイルス専門家の陳建仁(Chen Jianren)副総統、夜も眠らぬ対応から「鉄人」というニックネームを頂戴した陳時中(Chen Shizhong)衛生福利部長(厚労相)、そしてAI戦略を駆使して防止を行った唐鳳(Tang Feng)ITデジタル相である。

台湾は国内に余裕が出てきたため、「マスク1000万枚を世界に供給する」という「マスク外交」も進めた。そして、「WHO総会は台湾モデルを世界に提供する絶好の機会」ということで、参加への攻勢を強めたのである。gettyimages

この動きに乗ったのが、米ドナルド・トランプ政権だった。

トランプ大統領は、世界でアメリカが最も悲惨な目に遭った新型コロナウイルスによって、11月の再選に向けた見通しがすっかり狂ってしまった。そこで中国を「悪役」に見立てることで、自らの責任を回避しようと躍起になっている。

WHOのテドロス事務局長に対しても「中国の手先」と考えており、4月14日の会見で、「WHOへの拠出金を停止する」と宣言した。

これに先立って、アメリカは3月26日、台北法(Taipei Act)を成立させている。これはアメリカ政府に、台湾の国連機関への参加を促すことが含まれている。そこでアメリカは日本、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランドの賛意を取りつけ、5月7日にWHOに対して、台湾のオブザーバー参加を要求した。

中国『環球時報』の強烈な社説

これに対し、中国は猛烈な反発を見せた。政府の立場を代弁する中国最大の国際紙『環球時報』(5月12日付)は、強烈な社説を掲載した。タイトルは「アメリカの傀儡となった台湾当局にどんな『真の外交』が期待できるというのか」。その要旨は、以下の通りである。

〈 18日から行われるWHO総会に台湾当局は何とか入り込もうとしているが、形勢はよくない。8ヵ国の西側国家が口頭でWHOに台湾の参加を求め、ワシントンはテドロス事務局長の裁量で参加は可能だと主張する。

だがWHO側は、「事務局長には何の権限もなく、参加国が決定するものだ」と回答した。台湾の参加は13の小国が提案しているもので、194ヵ国の参加国から見れば少数派だ。

北京は今回の台湾の騒ぎを、「以疫謀独」(疫病で以て独立を謀る)としているが、客観的に見ても、まさにそういうことだ

ワシントンは北京に対して、台湾カードを多く切っていこうと決めていて、今後、台湾を巡る面倒は増えていくだろう。だが中国にとって有利なのは、「一つの中国」の原則は、世界中の普遍的な承認を得ていることで、それは現行の国際秩序の基盤の一つとなっている。

アメリカ側の主要なレバーは、次の3つだ。第一に台湾の民進党当局とアメリカの結合。第二に共に声を上げてくれる同盟国。第三にその他のアメリカが影響を持つ国々だ。長期的に見れば、アメリカがそのようなレバーを引いて台湾海峡を錯乱させたとしても、「一つの中国」に与える影響は限定的なものだ。

さらにアメリカが、台湾有事を自国の有事のように捉えて実質的な行動に移したならば、中国も決断して、大きな代価をもってアメリカの攻撃を撃退するのを目にすることになるだろう。

台湾問題は、峻厳な中米の対立点となっており、中米双方にとって挑戦だ。中国社会で最も重要なのは、国家の主権を死守するいかなる行動をも支持することであり、同時に毎回、中国が「完勝」するのを期待しているわけではないことだ。アメリカには優れた実力があり、ある時には優勢に進めるかもしれない。だが、われわれはそうしたこともあるだろうと受けとめているのだ。

結論を言えば、中国大陸の武力行使によって台湾を取り戻す能力は日増しに向上している。中国大陸の台湾問題に対する総合的な実力の変数はますます強まっており、これこそが台湾海峡情勢の本質的な変化というものだ。

民進党当局は常に、様々な操作をして腰を折り、情勢に変化を与えようとするが、それは微々たるものにすぎない。民進党当局は(中国が2005年に定めた)「反国家分裂法」で指弾されるべきだ。彼らは一方でアメリカの保護を求め、もう一方では「国際的支持」の信頼性を疑っているのだ。換言すれば、北京は実質上、台湾海峡情勢の大枠の方向をしっかりとコントロールしていると言える。

台湾のいわゆる「独立外交」は、とっくに死んでいる。台湾はアメリカの傀儡として国際舞台に戻ってこようとしているが、それは蜃気楼のようなものだ。

民進党当局がやろうとしていることの本質は、台湾島をカリブ海に移動させることだ。もしくはアメリカによって一時、高みへと押し上げられたように見えるものの、そこは本来の位置ではなく、一瞬にして再び奈落の底に突き落とされるだろう 〉

何とも強烈な檄文である。

蔡英文政権に対する危機感の表れ

続いて、5月15日には中国外交部の定例会見で、趙立堅報道官が、やはり激しい口調で述べた。

「最近、私はすでにもう何度も、いわゆる台湾のWHO総会への参加問題について、評論を述べてきた。

新型肺炎が発生して以降、台湾の民進党当局は、ウイルス問題を利用して、政治問題を弄んできた。国際社会に向けて、台湾をWHO総会に参加させてほしいと騒ぎ、その実際の目的は、西洋を頼って己を格上げすること(挟洋自重)、そして『以疫謀独』なのだ。そのため中国は決然と反対する。彼らの謀略は絶対に成功しないだろう。

中国台湾地域のWHOへの参加は、必ず一つの中国の原則に照らして処理する。これは国連総会第2758号の決議、及びWHO25.1号決議で確定している基本原則である。2016年に台湾で民進党が執政するようになって以降、『台湾独立』の分裂の立場を頑固に堅持している。

彼らは両岸が同属の『一つの中国』であることの承認を拒んでおり、よって中国台湾地域がWHOに参加する政治的なベースは存在しない。台湾地域がWHO総会に参加できないのは、民進党当局が招いた結果であり、民進党当局はこのことをよく分かっているはずだ。

中国の中央政府は常に、広大な台湾同胞の健康福祉を高度に重視している。今年1月、中央政府は台湾地域の防疫の専門家を武漢市に招待し、ウイルスを防止する状況を視察させた。5月15日までで、中央政府は台湾地域に対して、新型コロナウイルスの情報を152回も通知している。

一つの中国の原則のもと、2019年以降、中国台湾地域の衛生の専門家たち計24人(16回)が、WHOの専門的な活動に参加している。台湾地域へは十分にウイルスの情報が行き届いており、いわゆる『国際的なウイルス防止の抜け穴』などは存在しない。

WHO執行委員会の共通認識によれば、今年の総会は、新型コロナウイルスのことと、執行委員の選挙など必要な議題のみを討論する。これは多くのメンバー国が、今総会の国際協力を利用して、共同で新型コロナウイルスに立ち向かうという望みを反映したものだ。

WHOは長年にわたって、少数の国家が提議する台湾を参加させる提案を拒絶してきた。このことは十分に、国際社会の人心の向かうところ、すなわち「一つの中国」の原則を体現している。

すでに大勢は決しているのであり、いかなる挑戦も容認できるものではない。個別の国家が好き勝手に台湾の参加を提案したら、その目的はただ一つ、衛生問題を政治問題化させようということだ。

全世界がウイルスと戦う協力が実現しようとする時に、ただ己の政治的な私欲によってWHO総会を乗っ取り、損害を与えるのは惜しいことだ。このようなことがまかり通れば、WHO総会の進捗を大きく妨げ、国際社会のウイルス防止の協力を破壊してしまう。そのようなことをしても、結果として国際社会の絶対的多数のメンバーの決然とした反対に遭うだけだろう」

こちらもかなり激しい口調だった。一般に、中国人が最も激高する話題は、一般人ならカネにまつわる話で、政府やマスコミ関係者なら台湾問題である。だが最近は、台湾に関して、さらに敏感になってきていることを、中国を訪問していて感じる。それだけ蔡英文政権に危機感を抱いているという証左だろう。

蔡英文政権「最後の抵抗」

『環球時報』の社説に書かれ、外交部報道官も発言していた「以疫謀独」(イーイーモウドゥ=疫病を以て独立を謀る)という言葉が、今回の中国側の主張のキーワードである。

蔡英文政権は新型コロナウイルスを、台湾独立の突破口にしようとしているという見方だ。特に国連機関に関しては、建国から22年も経た1971年に、ようやく台湾と入れ替わる形で加盟を勝ち取っただけに、絶対に譲れないと、中国は考えている。

私は1月に、蔡英文総統が再選された選挙を取材し、与党・民進党関係者たちにも話を聞いた。その模様は新著『アジア燃ゆ』に詳述したが、一言で言えば、817万票という台湾憲政史上最高得票数で再選された蔡英文総統は、「反中政策」に関して強い自信を持っている。反中政策を貫かなければ、台湾は「第2の香港」になってしまうという強い危機感を抱いている。gettyimages

今回の新型コロナウイルスに関しても、「奇跡の封じ込め」に成功したのは、2月6日という早期に中国人の「入国」を禁止したことが大きかったと、蔡英文政権は考えている。つまり昨年、香港の若者たちがデモで唱えていた「NO CHINA」の延長として、新型コロナウイルス問題を捉えているのである。

一例を挙げると、蔡英文政権はいまだに、「COVID-19」という新型コロナウイルスの「公式名称」を使用せず、「武漢肺炎」と呼んでいる。「中国発のウイルス」であることを、国民にはっきり示し、「NO CHINA」を貫こうということだ。そして多くの台湾人も、「台湾の奇跡」を世界が報じている状況を認識しており、蔡英文政権の手法を支持している。

というわけで台湾側は、先週後半に、「最後の抵抗」に出た。

その第一弾は、5月14日午後に台湾総統府で行われた陳建仁副総統の退任挨拶を兼ねた記者団との茶話会である。

陳副総統はもともと、台湾大学のウイルス研究の第一人者で、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)騒動の時に、衛生福利部長として指揮を執った。今回も蔡英文総統から一切を任され、「台湾の奇跡」の立役者となった。今週20日に退任し、頼清徳(Lai Qingde)新副総統とバトンタッチする。

「中国には透明性が足りない」

陳副総統は、記者団を前に、公の場で発言する「最後の機会」として、思いの丈を語った。陳建仁副総統のFacebookより

「WHOのテドロス事務局長は、わが国は参加の資格がないと述べたが、WHO総会の主旨は『Health for all』であり、全世界の人々が皆、健康的な基本的人権を享受するということだ。誰一人として、WHOがカバーする健康ネットから孤児になってはならないということだ。

しかしながら、大変不幸なことに、政治的な関係によって、2370万の台湾人は全世界で衛生的な孤児となってしまった。WHOは過度に政治面を重視していて、専門性や中立性を忘れ去っている。これは驚くべきことだ。

実際、WHOがこれまでやってきたことは素晴らしく、人類の健康に大きな貢献をしてきた。ただ今回の武漢肺炎については、一言で言えば、対応が遅すぎた。

台湾の防疫は、初動が早く、先手を打って手配し、臨機即応に対応した。まさに全世界の国が学習するに値し、WHOは全人類の健康という角度から、台湾に総会に参加する機会を与えてほしい。台湾の参加は台湾のためだけでなく、WHOがウイルスに打ち勝ち、全人類が打ち勝つためでもある一石三鳥の方策なのだ。(中略)

現在、全世界が武漢肺炎の影響を受けている状況下で、重要なのは公開と透明性だ。台湾が武漢肺炎をうまく抑え込めた重要な要因は、まさに公開と透明性にある。われわれは、自由民主国家の一切が透明な状況下で、指揮センターと陳時中部長が国民の信頼を得て、皆が比較的容易に連帯できたのだ。(中略)

(2003年の)SARSの時、二つの重要なポイントがあった。一つは、SARSのウイルスをキャッチしないことには、分子診断の技術や仕事ができないことだ。いまで言うならPCR検査のようなことだ。当初は香港のある大学が提供してくれると言ったが、後に持っていないと言われた。結局、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が提供してくれた。

もう一つは、われわれは当時、とても誠実に一つひとつのSARSの病例をWHOに報告していた。ところがWHOに詳細な関連資料を要求しても、与えてくれなかったのだ。最後はやはり、アメリカ疾病予防管理センターが協力してくれた。その際、私は全世界が協力することの重要性を痛感した。(中略)

(台湾の)吳釗燮(Wu Zhaoxie)外交部長が述べたように、WHOは2005年に中国と秘密の覚書を交わした。それは、台湾のWHOでのいかなる活動についての参加も、中国の合意を得るというものだ。この協定は公開されていないので確認できないが、すべてを公開し、透明な方式にするのが、全世界の人々のとって最善の方策ではないか。(中略)

アメリカは台湾がWHOのオブザーバーとして総会に参加することを、一貫して支持しており、感謝に堪えない。だが、アメリカが主張するように、すべてのWHOの加盟国のシステムが、専門性や健康、人権と向き合う必要がある。(中略)

国によっては、ウイルスの資料が不透明であったり、公開している部分が少なかったりする。もしくは疑わしいようなデータが入っていたりする。そうした要素も考えながら、わが国は他国との交流解禁を検討していく。例えば、42日間も感染者が出ていないという国があり、それ自体は素晴らしいことだと思うが、それが透明度の低い国であれば、長い時間をかけて監察していく必要があるだろう。

武漢を見ると、(76日間の封鎖から)解放したはいいが、またウイルスが発生した。だから個別の透明度を見ながら、いつになったら交流を解禁するかを見極める」

陳建仁副総統は、私も1月に台北で会見に出たが、非常に温厚な性格で、普段はあまり露骨に中国を非難することはしない。だが言葉の端々に、台湾は透明性を重視し、中国は透明性が足りないと言いたいことが読み取れる。

実際、今回の新型コロナウイルスの一件で、中国と台湾は、実に対照的な対応を見せた。中国は、ある日突然、理由も告げず、トップダウンで対策を実行していく。それに対して台湾は、トップダウンでやるところは似ているが、すべてを公開し、透明にすることによって、政府が国民からの信頼を得ようとする。唐鳳ITデジタル相の言葉が印象的だった。

「インターネットやAIは、政府が国民を監視するための道具ではありません。そうではなくて、市民が政府を監視するための道具なのです」

日本にとっても他人事ではない

さて、5月15日夜には、陳時中衛生福利部長が、台北で「新型コロナウイルス肺炎防止シンポジウム」を、やはりテレビ電話を使って主催した。そこにはアメリカ、日本、カナダなど、理念の近い14ヵ国・地域の代表約50人の専門家が参加した。

アメリカからは、パム・プライアー国務省国際機構局次官補代理やコリン・マキフ保健省グローバル事務課副課長が参加し、「台湾模式(台湾モデル)の素晴らしさ」や「台湾が国際社会に参加することの意義と必要性」について述べた。だが、日本から参加した人名は報道されなかった。

これは言って見れば、台湾が独自に開催した「ミニWHO総会」のようなものだった。陳時中衛生福利部長は、こう強調した。

「わが国はCOVID-19のパンデミックを受けて、ウイルスの監測、国境検疫、地域防疫、医療防疫物資整備、衛生教育宣導などの方面で、関係する策略を制定した。

それは、広い地域での監測、ウイルス実験室の量と能力の強化、外国国籍の人の入国及びトランジットの禁止、入国者の14日間の隔離、AIを駆使した検疫システム、マスク実名制、ソーシャル・ディスタンスの実施などで、ウイルスの拡散を防ぐことで、国民の健康と安全を維持し、保護したのだ。

他にも、日常生活を維持するにあたって、感染者がいない地域でわずかに感染者が発生するという事態も起こっている。今後とも、わが国の政府の民間による迅速な動員力、政策の即決力、徹底的な執行力、資源の整合及び配分力、情報の透明化と防疫のIT化という6大特長をもって対応を進めていく」

以上である。総じて言えば、台湾が今回、WHO総会にオブザーバーとして参加できなかったことは、中国側の勝利であり、台湾側の敗北である。だが中台問題を俯瞰すると、両岸の対立は様々な分野で強まっており、さらに中台問題は完全に米中問題の一部と化してきている。

それどころか今後、台湾問題が米中問題の核心となっていくものと思われる。もっとも台湾問題は、1979年の米中国交正常化の時から、常に核心ではあるが、そのリスクが日に日に高まっている。尖閣諸島問題を抱える日本も、当然ながら他人事ではない。