関西圏のニュースを中心に配信している「Lmaga.jp」というサイトがある。このサイトに掲載されている「コロナ収束に自粛は関係なかった、大阪の専門家会議で明言」という記事が興味深い。結論はタイトルの通り、特措法による緊急事態宣言や「接触機会の8割削減」、地方自治体による自粛要請など日本中が総力をあげて取り組んだ新型コロナ対策が、事態の収束とはほとんど関係なかったというのだ。この説を提唱したのは大阪大学核物理研究センターのセンター長・中野貴志教授。「感染拡大の収束に外出自粛や休業要請による効果はなかった」と明言した。同教授は政府が感染状況をつかむために用いる指標・K値を発案した物理学者。

中野教授の説明をいくつかピックアップしてみる。「日本では第1波を非常に効率よく収束させ、3月初旬に収束させていたが、間髪を入れずに欧米から感染者が流入し第2波の感染拡大が始まった。その拡大がピークになり、そこから減少になった時期(ピークアウト)は3月28日頃。原因は3連休の気のゆるみではない」と分析結果を説明している。この説によればすでに第2波は収束し、今後懸念されるのは第3波になる。「8割削減」については「(西浦教授の想定値は)あり得ないと思った。しかし、取られた政策が間違っていたとは思わない。後から考えると過剰だったりするが、そのことをことさら責めたり、完全に間違っているとあげつらったりするのは間違っている。大切なのは冷静な目でデータ蓄積を見返すこと」

個人的にはこの間ずっと過剰自粛ではないかと思っていた。そのせいか中野教授の説明はすんなりと腑に落ちた。とはいえ、何が原因で感染拡大が収束したのかははっきりしない。座長である大阪大学の朝野和典教授は「クラスターを作らせないという意味での休業(自粛要請)は有効で、次の波が来たときもやる必要がある」と説明している。中野教授は重症化させない方法、高齢者を逆に隔離することなど「もう少し深くいろんな人の意見も聞いて、意見を戦わせる必要がある」と指摘する。その通りだと思う。喧嘩腰の論争で事態が改善することはない。日本にとっては、山中伸弥教授が指摘した「ファクターX」を究明することが国際的な使命になる。