新型コロナウイルスの影響で4月を中心に患者が激減した医療機関が出ていて、経営面への影響がいま、深刻になっています。診療報酬の入金が2か月遅れで行われるためで、第2波も懸念される中、行政の支援を求める声も出ています。
仙台市青葉区で内科などを診療する「仙台星陵クリニック」では、新型コロナウイルスの影響で受診を控える人が相次いだほか、受け入れを制限したため、外来患者の数が前の年の同じ月に比べて4月は42%、5月は36%それぞれ減少しました。
患者を診察した対価として得られる「診療報酬」は、診察から2か月遅れて支払われるため、4月の患者の減少が影響するのは今月となり、職員へのボーナスの支払いもあることから金融機関からの新たな借り入れを検討しています。
病院を運営する医療法人の松井博滋理事長は「収入が回復するめどがたっていないため、借り入れを申し込んでも認められるか分からない。本当の危機は今月から始まったと思っています」と話していました。
また、医師や歯科医師でつくる宮城県保険医協会では4月から5月にかけて200余りの医療機関にアンケートを行い、「収入が10%以上減少した」と回答した医療機関が6割以上に上りましたが、「実態はさらに深刻だ」という声を受け、経営実態をさらに詳しく聞く追加のアンケートを行っています。
宮城県保険医協会の井上博之理事長は「思った以上に状況は深刻だ。第2波、第3波に備えた対策の必要性を行政に訴えていく」と話していました。
減収は新型コロナ感染者の受け入れ機関でも
新型コロナウイルスの感染者を受け入れた医療機関でも収入の減少が深刻になっています。
仙台市の東北大学病院は、県内に7つある新型コロナウイルスに対応した指定医療機関の1つで、重症者も含めて複数の患者を受け入れ、全員退院しました。
病院では感染の拡大に対応するためことし3月下旬から従来の感染症専用のベッドだけでなく、集中治療室の2つのベッドも空けていて、緊急性が低いほかの病気の手術を延期するなどしてきました。
この影響で、4月と5月の手術の件数が前の年の同じ月に比べてそれぞれ200件余り減少しました。
病院の4月分の診療報酬は前の年の同じ月よりおよそ4億円減少し、その影響を実際に受けるのは今月だということです。
冨永悌二病院長は「通常は手術が大きく減ることはなく、異常事態だととらえている。非常に強い危機感を持っている」と話しています。