【ソウル時事】朝鮮戦争(1950~53年)が勃発してから今年で70年。国連軍を主導して戦争に介入した米国は、戦後も在韓米軍の駐留を通じて地域の安定に目を光らせてきた。だが、「米国第一」を掲げるトランプ米大統領は在韓米軍の縮小や撤退への意欲を隠さない。米韓同盟と在韓米軍の意義が改めて問われている。
トランプ氏、米朝交渉は結果より自己顕示 拉致問題は明記できず―ボルトン氏回想録
「韓国国民は米国をはじめ22カ国の国連参戦勇士の犠牲を決して忘れない」。文在寅大統領は朝鮮戦争勃発からちょうど70年に当たる25日、ソウル近郊の空軍基地で開かれた式典でこう強調した。文氏の背後には北朝鮮で戦死し、米軍から引き渡された韓国人兵士の遺骨147柱が置かれ、トランプ氏は参戦兵への感謝を表明するビデオメッセージを式典に寄せた。
米韓国防当局は25日の共同発表文で、「70年を経ても韓米同盟は韓(朝鮮)半島と地域の安全保障、安定、繁栄の基軸としての役割を変わりなく果たしている」と強調した。発表文には「血盟」との表現も盛り込まれたが、結束をアピールする言葉とは裏腹に米韓同盟への懸念は募る。
「米韓軍事演習は挑発的で時間と金の無駄だ」。トランプ政権の内幕を暴露したボルトン前大統領補佐官の回想録によると、トランプ氏は2018年6月、シンガポールで初会談した北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長にこう伝えた。トランプ氏は実際、会談後に演習凍結を発表。日韓だけでなく、米当局者の間にも困惑が広がった。
ボルトン氏はまた、在韓米軍駐留経費の韓国側負担をめぐる交渉で、トランプ氏が韓国側に19年比5倍の50億ドル(約5350億円)を要求し、応じない場合は米軍撤収で脅す考えを披露したと明らかにした。事実なら、トランプ氏は「血盟」を担保する在韓米軍を外交成果への「取引材料」として利用していることになる。
米軍は朝鮮戦争中、30万人以上の兵力を投入。戦後の55年、在韓米軍は8万5500人規模となり、その後は増減を繰り返し、現在は2万8500人規模に減少した。米国では昨年12月、在韓米軍削減の場合に韓国との事前協議を義務付ける法律が成立。米議会がトランプ氏の縮小圧力を受け入れない姿勢を示した形だ。
だが、非核化をめぐる米朝交渉が決裂し、韓国では米国への不満が高まる。文大統領の補佐官を務める文正仁氏は26日、記者団に対し、ボルトン氏の回想録に触れ、「トランプ氏は正恩氏を気に入っていた」と指摘。決裂の原因は実務協議を担った米政府当局者に責任があると批判し、いら立ちを隠さなかった。
南北関係が再び緊張モードに入り、軍事大国として台頭した中国の存在感が強まる中、北東アジアの要として在韓米軍の重要性はむしろ高まっていると指摘される。日韓防衛当局筋は「在韓米軍が縮小、撤退すれば影響は日本に及ぶ。対中の前線が日本まで下がることになる」と述べ、朝鮮半島情勢への危機感を強めている。