[ブリュッセル 21日 ロイター] – 欧州連合(EU)首脳は21日、5日間に及んだ対面協議の末に新型コロナウイルスで打撃を受けた経済の立て直しに向けた7500億ユーロ規模の復興基金案で合意した。
ミシェルEU大統領は明け方の記者会見で「この合意は欧州が行動力を有するという明確なシグナルを送るものだ」と指摘。「これはお金だけでなく労働者や家族、仕事、健康、幸福に関係するものだ」とし、欧州を未来に向けて送り出すものだと強調した。
フランスのマクロン大統領はまさに歴史的な合意だと述べ、EUの復興計画と予算によって新型コロナウイルス感染症がもたらした課題に対応できるとの認識を示した。
EU首脳の合意を受けて外国為替市場ではユーロが一時1.1470ドルと4カ月ぶりの高値を付けた。
復興基金の7500億ユーロは、トリプルA格付けの欧州委員会が共通債券を発行して調達する。当初、内訳は5000億ユーロが返済義務のない補助金、残りを融資としていたが、倹約4カ国が反対。ミシェルEU大統領が補助金3900億ユーロ、融資3600億ユーロという妥協案を提示した。
ただ気候変動対策に充てられるはずだった資金が削られたほか、ハンガリーやポーランドなど、民主主義の価値を尊重していないとされる国への資金提供について条件は課されなかった。
支援対象国が条件を満たしていない場合に資金提供を一時的に停止する「緊急ブレーキ」の仕組みが組み込まれ、倹約国側の意向が反映された。
倹約国はまた、次期EU中期予算で払い戻しが増額されることになった。EU予算からの払い戻しは、かつて英国が受け取っており、英国のEU離脱を機にフランスが段階的に廃止したいと考えていた。
復興基金案は今後、欧州議会の承認、全加盟国の批准が必要で、基金の稼働開始には時間を要する。
復興基金を巡っては南東欧諸国と財政規律を重視する「倹約4カ国(オーストリア、オランダ、スウェーデン、デンマーク)」が対立し、議論は紛糾した。
外交筋によると、マクロン氏は19日夜、これら4カ国に対して怒りを爆発させたほか、ポーランドのモラウィエツキ首相は「けちで自己中心的な国々だ」と非難した。
オランダのルッテ首相は「いくつかのぶつかり合いはあったが、交渉の一部だ」と述べ、イタリアのコンテ首相との関係は「暖かい」ものだと話した。オーストリアのクルツ首相は倹約4カ国の交渉力は定着していると語った。
ルッテ氏によると、今回の首脳会議は過去2番目のマラソン交渉となり、2000年にフランスのニースで行われた過去最長の会議に20分及ばなかった。 同氏は「午前6時5分まで続けていたら新記録だったが、5時45分に終わった」と述べた。