韓国・平昌にある「韓国自生植物園」に設置された少女像とひざまずいて謝罪する安倍首相をモチーフとした像(同園提供・共同)
韓国・平昌にある「韓国自生植物園」に設置された少女像とひざまずいて謝罪する安倍首相をモチーフとした像(同園提供・共同)

 菅義偉官房長官は28日の記者会見で、韓国北東部・江原道(カンウォンド)平昌(ピョンチャン)の「韓国自生植物園」が慰安婦像にひざまずき謝罪する安倍晋三首相を模した像を園内に設置したことについて「日韓関係に決定的な影響を与える」と強い不快感を示した。

 菅氏は「国際儀礼上、許されない」とも述べ、こうした日本側の認識を韓国政府に伝えたことも明らかにした。菅氏の厳しい姿勢は「過去最低レベル」に冷え込んだ日韓関係の現状を象徴しているともいえる。

 近年の日韓関係悪化を招いた原因の一つが、いわゆる徴用工訴訟で日本企業に賠償を命じた韓国最高裁判決だ。日本政府は請求権問題の「完全かつ最終的」な解決を確認した昭和40年の日韓請求権協定に違反すると批判している。

 しかし、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、判決で生じた国際法違反状態を是正する動きを見せていない。このままでは、「公示送達」の期限の8月4日以降には日本企業の資産が現金化される可能性がある。菅氏は28日の記者会見で「現金化は深刻な状況を招くので、避けなければならないことは韓国側に繰り返し強く指摘している」と説明した。

 菅氏が安倍首相を模した像の設置を強く批判した背景には、徴用工問題で解決策を打ち出そうとしない韓国政府へのいらだちに加え、公示送達期限を前に慎重な対応を引き出す狙いもあるとみられる。日本政府高官は「これで、みんな韓国がひどい国だと思うだろう」と話す

 一方、韓国外務省報道官は28日、像について、事実確認の必要があるとした上で「一般的に外国の指導者級の人に対しては国際的な礼儀がある」と述べ、設置を支持しない考えを示した。火消しに走った格好だが、徴用工問題での解決策が示されない限り、日韓関係修復が程遠いことに変わりはない。(大島悠亮、ソウル 名村隆寛)