「4月、5月は緊急事態宣言のもと、経済をいわば意図的、人為的に止めてきた。結果として非常に厳しい数字となった。世界的にも、同様かそれ以上に厳しい数字になっている」。西村康稔経済再生相は17日の記者会見で、かつてないGDPの落ち込みの特異さを強調した。
コロナ危機が本格化した春以降、専門家からは、4~6月期は戦後最悪のマイナス成長に陥るとの見方が相次いでいた。今回の結果はおおかたの予想通りとはいえ、ショックの大きさは歴史的に際立っている。
統計が比較可能な1980年以降で年率換算のマイナス幅が2ケタに乗ったのは、リーマン・ショック直後の09年1~3月期の17・8%のみ。14年と19年の消費増税直後はそれぞれ7%台の減少、東日本大震災と原発事故があった11年1~3月期は5・5%減だった。単純比較はできないものの、第1次石油危機直後の74年1~3月期でも13・1%減にとどまる。
今年4~6月期の実質GDPを実額でみると、年換算で485兆円。500兆円を下回るのは498兆円だった12年10~12月期以来、約7年半ぶり。日本経済の規模は第2次安倍政権発足前の、東日本大震災直後の水準にまで縮んだことになる。
今回の落ち込みが激しかったため、7~9月期は反動で高いプラスが見込まれる。日本経済研究センターが13日に公表した民間エコノミスト34人の予測平均は年率約13%増。この通りでも、前期に減った分の半分に届かない。
緊急事態宣言が5月下旬に全面解除された後、消費は全体的に回復傾向にある。総務省の家計調査では、2人以上世帯の6月の消費支出(季節調整値)は前月より13%増えた。1人10万円の給付金効果もあったとみられる。
ただ、家電などの売れ行きが急回復した一方で、旅行や外食などは低迷したままだ。政府は7月に始めた消費喚起策「Go To キャンペーン」でテコ入れをはかるが、足元では感染者が再び急増し、活動再開はままならない。
こうした状況から、秋以降はGDPの回復に急ブレーキがかかるとの見方が広がっており、「ワクチンや特効薬が行き渡るまでは、一進一退を繰り返すのではないか」(エコノミスト)との声も聞かれる。(山本知弘、津阪直樹、新田哲史)