4−6月期の国内GDPが昨日発表された。1−3月期に比べて7・8%減、年率換算では27・8%減である。大方の予想通りの落ち込みであり、個人的には「エコノミストの事前予想が珍しく当たった」、そんな感覚だった。もちろん落ち込み幅は記録的。数字だけ見れば「戦後最悪のマイナス」(読売新聞)であることは間違いない。だが、非常事態宣言を発令し「経済をいわば意図的、人為的に止めてきた」という実態を勘案すれば、G D Pの落ち込みは比較的軽微だったのではないか、個人的にはそんな気がしている。「GDP減、戦後最悪 日本経済、底見えず」。これは毎日新聞の見出しだが朝日、読売、を含めて日本を代表する新聞各紙の捉え方はあまりにも単純だ。

同じ時期の先進7カ国の年率換算したGDPは英国の59・8%減を筆頭に、以下、フランス44・8%減、イタリア41・0%減、ドイツ34・7%減、米国32・9%減となっている。日本は健闘した方だ。日経新聞の試算によるとこの間の実質成長率は中国がプラス3・2%、以下、ベトナム同0・4%、台湾がマイナス0.6%、韓国同3.0%とアジア勢が上位を占めている。この比較で日本はロシア、米国についで7位。アジア圏に限ってみると日本の比較優位が大幅に後退している。アジアの牽引役だった日本は、今回のパンデミックを通してその役割を中国に明け渡した。ここにもGDPの本質の一つが隠されている。それを抜きに数字だけに焦点を当てる日本のメディアのニュース感覚は、問題の本質を抉り出していない。時代遅れなのである。

そんな中で個人的な感覚に近いと感じたのは産経新聞の記事だ。「GDP落ち込み、欧米に比べれば傷は浅い? 都市封鎖の有無や中国の回復が影響か」と見出しをつけている。ロックダウンを実施した欧米との比較を行った上で、「欧米に比べ生産活動への影響が限定的だったのに加え、発生源の中国経済がいち早く再開した恩恵を受けたとの指摘もある」と解説している。さらに、「日本は令和元年10月に消費税増税を実施したことで同年10~12月期以降、3四半期連続のマイナス成長となった」と指摘。「国富の減少はその分蓄積している」と警鐘を鳴らしている。パンデミックだけではなく時系列を加味してGDPの問題点を抉り出そうとしている。これこそが報道機関に必要なニュース感覚だ。日本中が再び閉塞感に覆われはじめている。その一因は、古色蒼然としたワンパターンのメディアの報道姿勢にあるのかもしれない。