- 通貨戦争には至らぬも微妙な牽制は注目に値する-イーモンズ氏
- 来週のECB政策委で為替動向に関する発言あるかトレーダー注視
為替相場を巡って新たな小競り合いが繰り広げられようとしているのではないか、との臆測が台頭しつつある。このところのドル安傾向について、米国以外の主要国・地域の中央銀行当局者から懸念の声が上がっているためだ。
欧州中央銀行(ECB)チーフエコノミストのレーン理事は今週、ユーロが2年ぶりに1ユーロ=1.20ドル台に上昇したのを受けて為替相場に言及した。ユーロ高進行にくぎを刺したものと受け止められる。ニュージーランド準備銀行のオア総裁はもっと慎重な言い回しだったものの、成長促進に必要ならばさらなる金融緩和に踏み切るとの姿勢を示唆。イングランド銀行や日本銀行も追加緩和の用意があると見受けられる。
メドレー・グローバル・アドバイザーズのマネジングディレクター、ベン・イーモンズ氏は「新たな『通貨戦争』にはまだ近づいていないかもしれないが、主要中銀から微妙な牽制(けんせい)の動きが見られるのは注目に値する」と指摘。「大幅なドル安ないしドル高は世界の金融政策に影響するため、ドル相場の変動時には世界の中銀がある時点で反応する」と話した。
新型コロナウイルス感染拡大の影響に苛(さいな)まれる状況にあって、米国以外の国や地域ではドル安に伴って景気悪化やディスインフレの懸念が増している。主要通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は、米国以外の国・地域の中銀当局者の発言を受け今週に入って幾分値を戻したものの、3月に付けたピークから10%余り低下している。
ECBのレーン理事は今週、ユーロの相場水準は金融政策にとって「重要だ」との考えを示唆。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)はまた、ECBの当局者がユーロ高について、輸出の重しとなって物価を押し下げることになると心配していると報じた。来週のECB政策委員会で為替動向に関する発言があるか、トレーダーは注視することになる。
ECBはユーロ高が物価押し下げと懸念、Fed新方針も問題視-FT
イングランド銀行のラムスデン副総裁は、英中銀として必要に応じて債券購入を増やすことができるとコメント。日本銀行の若田部昌澄副総裁はインフレ鈍化に警戒が必要であるとの認識を示した。
みずほ銀行のアジア外国為替チーフストラテジスト、張建泰氏は、ドル安によって米国以外の国・地域の中銀の間に懸念が生じるかもしれないが、あからさまな通貨戦争が起こる公算は小さいとみる。「通貨戦争というよりむしろ、成長を支援するためさらなる緩和のための政策的余地があると、中銀として強調するものではないか」と語った。
複数のアナリストは、最近のドル安は歴史的な高値からの下落であり、依然として過去10年間の平均水準を上回っていると指摘している。
原題:Specter of Currency Skirmishes Emerge With Central Bank Talk (1)(抜粋)