[ロンドン 9日 ロイター] – 英政府は9日、欧州連合(EU)離脱後に通商問題をどのように扱いたいかを示す新たな国内市場法案を発表した。英政府は同法案が国際法の枠組みであるEU離脱協定に違反することになると認め、法案は英国とEUの新たな対立を引き起こした。法案は英議会で審議され、上下両院の承認を経て成立する。 9月9日、英政府は、欧州連合(EU)離脱後に通商問題をどのように扱いたいかを示す新たな国内市場法案を発表した。ロンドンで1月31日撮影(2020年 ロイター/Toby Melville)
法案の主な論点をまとめた。
<国際法に違反>
法案はその条項について、「国際法や他の国内法との矛盾ないし不一致にかかわらず」、効力を持つとしている。
<北アイルランド>
法案は英国内法の中に、北アイルランドの物品の英市場への自由なアクセスを確実にし、EU国家補助金の規則が英領北アイルランドには引き続き適用されるが、残りの英国地域には適用されないことを明確にするとのジョンソン英首相の約束を入れることになる。
こうした内容はEUの懸念を引き起こした。英国とEUが1月に調印した離脱協定の一部条項を、英国が一方的に変更することを決めたことになるからだ。
英政府に言わせると、狙いは離脱協定に含まれる「あいまいさを取り除き、北アイルランド市民への約束を英政府が常に果たせることを確実にし」、英政府が北アイルランド紛争の1998年和平合意を守るといった点を明確にする必要があるからだという。
法案は英国から北アイルランドへの物品の輸送について、輸出規制の変更や適用除外の一方的な権限を英閣僚に与える。
<国家補助金>
法案は国家補助金については、北アイルランドには引き続きEU規則が適用される一方で、英国は独自の枠組みを設定できることを明確にする。
この点はジョンソン政権には不可欠と見なされている。EUの規則に合わせるべきだとのEUからの要請に英政権は尻込みしており、EU域外の国はどこも独自の国家補助金制度を作る権利があるはずだと主張している。
<支出権限>
法案は支出権限についても英政府の手に渡し、英閣僚がEUの支出計画に代わるものを立案し実行することができるようにする。
英政府はスコットランド、ウェールズ、北アイルランドへの財政援助を決める権限も新たに得る。税収の使い道はこれまでEUが管轄していた。
英政府は2021年1月以降、インフラや経済開発、文化、スポーツ、教育や職業訓練の支援などにかかる権限も得て、英国全域のコミュニティーや企業向けに投資することができるようになる。
<相互認識>
法案は相互認識と非差別の原則を遂行しようとしている。英国の一部地域からの物品やサービスの生産販売を巡る規則について、相互に認識されるのを確実にする原則だ。権限を移譲された地域政府は現在と同様、独自基準を設けることができる一方で、英国内のどこに拠点を置く企業の取引からも利益を得られることになるという。
法案によると、英政府は国内市場の機能について英議会に報告する独立の諮問機関の設置を検討する。
<権限移譲>
法案は地方政府への権限移譲については、英政府がイングランドを代表するよう義務付ける。
EUから英政府に権限を移すことで、英政府は地方政府を通じ、地方政府の責任を取り去らない形で、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの市民に付与されている既存の支援をさらに完遂し強化することになる。
しかしスコットランドとウェールズは、法案はウェールズ、スコットランド、北アイルランドから権限を奪うことで、英連合王国を弱体化させると主張している。