【ロンドン時事】世界食糧計画(WFP)によると、極端な貧困に苦しむ人々は2015年までの30年間に世界全体で半分以下の約7億人に減少した。その間、十分な食料を長期にわたって得られない「飢餓」も25%減った。ところが、その後の4年間、紛争や気候変動の影響で飢餓に直面する人々の数は再び増加。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)がこれに追い打ちを掛けた。WFPにとって「飢餓のパンデミック」(デービッド・ビーズリー事務局長)の阻止が目下、最大の課題だ。
国連のデータでは、19年現在、極端な飢えに苦しむ人は世界で1億3500万人。16年からの4年間で70%近く増えた。「十分に食べられない人」では、19年時点でアフリカ大陸を中心に8億2100万人に上る。世界人口のほぼ9人に1人だ。
飢餓を生む最大の原因は紛争で、飢餓人口の60%はシリアやイエメンなど紛争で荒廃した国に住む。アフガニスタンやコンゴ(旧ザイール)などでは気候変動が食料供給に深刻な影響を及ぼしているほか、一部の国では害虫による農作物被害や折からの経済悪化が重なった。ビーズリー氏は新型コロナの流行前から「20年は第2次大戦後最悪の人道危機に直面することになるだろう」と警告していた。そこへ新型コロナが襲った。
ビーズリー氏は最近、外交専門誌への寄稿で「飢餓は概して、食べ物の不足からではなく、サプライチェーン(供給網)の崩壊や食料価格の急騰から生じる」と述べ、コロナ禍でそれが起き始めていると指摘。シリアやイエメンなど10カ国で、それぞれ100万人以上が「餓死の瀬戸際」にあると強調していた。
貧困と飢餓を30年までに撲滅するためには年間2650億ドル(約28兆円)の追加投資が必要とされる。WFPは国連食糧農業機関(FAO)などと共に、政府や国連といった公的機関だけでなく、民間企業による投資の必要を訴えている。