非正社員に退職金やボーナスを支給しないのは、不合理とは言えない――。最高裁が13日に示した二つの判決は、アルバイトや契約社員の原告らと正社員との待遇格差を埋める内容とはならなかった。ただ判決は「事例判断」に過ぎず、今後も訴えがあれば労働条件が個別に検討されることになりそうだ。

 今回の最高裁判決は、経営側の裁量に配慮をにじませるものだった。

 ボーナスが争点となった大阪医科薬科大訴訟で、昨年2月の大阪高裁判決が着目したのが、ボーナスを「ほぼ一律の支給率」で正職員に出していたことだ。仕事内容も成績もボーナス支給率に連動していないなら、働いたこと自体が重要――。そう判断して、同じようにフルタイムで働くアルバイト職員の原告にも支給すべきだと結論付けた。

 これに対し第三小法廷(宮崎裕子裁判長)は、アルバイトの原告と正職員との「仕事内容の違い」に注目した。原告と違い、正職員には病理解剖に関する遺族対応や毒劇物などの試薬管理がある、と指摘した。

 退職金が争点となった東京メトロ子会社「メトロコマース」の訴訟も同じ構図だ。昨年2月の東京高裁判決は、退職金は「長年の功労への報償」の意味合いがあり、正社員とほぼ同じ仕事を長くしてきた原告らにも一部当てはまるとした。だが第三小法廷(林景一裁判長)は、「正社員の仕事は売店に専従していない」と述べた。

 二つの最高裁判決で共通したのは、退職金やボーナスの支給目的について「正社員(正職員)としての職務を遂行しうる人材の確保や定着を図る」と、同じ文言で言及した点だ。「経営判断の自由」を訴える経営側の主張に沿う内容で、事実上、経営側の裁量に理解を示したものだ。

 メトロコマース訴訟で裁判長を…