菅政権の看板政策の一つはカーボンニュートラル、脱炭素社会への挑戦だ。2050年までにCO2など温暖化ガスの排出をゼロにする。簡単ではないが、やらなければ地球環境の悪化に歯止めがかからない。温暖化ガスの排出を完全にゼロにすることは現時点ではむり。排出を抑え、森林や炭素吸収技術の開発によって排出と吸収の差を差し引きでゼロにする。すでにE Uや中国をはじめ世界中の国々がこの挑戦に参加することを表明している。日本は出遅れていた。それが菅政権になって一気に動き出した。米国でもトランプ大統領に代わってバイデン大統領が誕生する。同大統領の看板政策もグリーン・ニューディールだ。インフラや環境に4年間で2兆ドル(約210兆円)を投資すると公約している。実現するかどうかはともかく、日米の方向は一緒だ。
具体策作りはすでにはじまっている。今日の日経web版に概要が掲載されている。要約すると税制と研究開発が柱。税制では環境投資を促すために、風力発電など再生可能エネルギーへの投資に減税措置を講じる。対象は風力に限らない。次世代リチウムイオン電池、パワー半導体など。また繰越欠損金制度も拡充する。もう一つの柱である研究開発支援の対象には水素、蓄電池、カーボンサイクル、洋上風力などが上がっている。リチウム電池は次世代自動車のキーパーツ。世界中で熾烈な開発競争が繰り広げられている。本来は日本の得意分野のはずだが、周囲を見渡せばいつの間にか中国やE Uなど先頭集団の後方に位置している。投資不足は技術的な劣化に直結する。半導体の二の舞は避けなければならない。半導体はコスト競争で負けた。だが、環境問題は半導体工場とは違う。日本の国土は海外に移転できないのだ。
日経web版によると、「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を通じて複数年にわたって資金を出す仕組みが浮上している。20年度第3次補正予算案で1兆円を計上するよう求める声がある」という。投資基金構想もいいだろう。問題は規模だ。第3次補正予算で1兆円は致し方ないとしても、本予算を含めた15カ月予算では最低でも10兆円規模の財源を確保する必要がある。第2次補正予算ではコロナ対策の予備費として10兆円を計上した。菅首相の腹一つだろう。その気になれば財源など如何様にもなる。リープフロッグ(Leapfrog)という言葉がある。日本流に訳せば“蛙飛び”だ。遅れを取り戻すために目標を一つ先に設定するという意味だ。5Gで出遅れた日本はいま6Gを目指している。これと同じだ。環境先進国からズルズルと後退した日本がいまやるべきこと、それはトップ集団のさらに先を目指すことだ。そのための覚悟は気持ちではない。財源だ。菅首相に覚悟はあるか。
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