東京都は27日、資金使途を新型コロナウイルスの感染拡大対応に限定した「コロナ債」の発行条件を決めた。地方自治体が発行する地方債の市場でのコロナ債起債は初めて。世界的に感染者が再拡大する中、発行規模は5年債としては過去最大の600億円に上り、都は倒産が相次ぐ中小企業支援への財源確保を急ぐ。

Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg
キーポイント
・調達資金は全額新型コロナ感染症対応向け
・中小企業制度融資の預託金に充当
・発行額は当初の300億円程度から600億円に増額
・5年地方債としては過去最大-地方債協会需要は1600億円超-主幹事

  都はこれまでも地方債の調達資金の一部を制度融資に充ててきたが、全額を融資に活用する初のケースとなる。都は9月の補正予算で2020年度の中小企業制度融資の目標額を2兆5000億円から3兆8000億円に増額、その財源として計1473億円の地方債追加発行を決めていた。

  帝国データバンクによると、新型コロナウイルスの影響を受けた企業の倒産件数の2月以降の累計は、今月26日時点で全国で740件に上る。都道府県別では東京都が175件と最多で、都は新型コロナ感染症対応の緊急融資を喫緊の課題と位置付けている。

  応募した一部投資家は、本来の意味で社会貢献などのESG(環境・社会貢献・企業統治)に近い側面もあるため購入を決めたと説明した。投資判断については非公表だとして匿名を条件に語った。主幹事によると、海外投資家や通常5年地方債には参加しない出資者のほか、金額を増やして参加する投資家も確認された。

  世界の感染者数が6000万人を超える中、国内の感染状況も11月上旬から悪化しており、東京都でも26日、新たに481人の新規感染者が確認された。都は感染拡大防止策として、一部を除く都内全域の飲食店などに28日から20日間、営業時間を午後10時までに短縮するよう要請するが、年末に向けて書き入れ時の時短営業は中小企業にとって大きな痛手となる。

  東京都公債課の鈴木孝典・統括課長代理は、今後もコロナ債を発行するか現時点では「未定」とした上で、「対策として恐らくやっていくと思うが、資金調達として都債を使う時でも、5年債だけでなくあらゆる手段を使っていく」との考えを示した。

【購入投資家層(比率、%)】

中央投資家地方投資家
生保、都銀等、信託、投信・投資顧問、系統上部(87%)地銀、系統下部、地方公的、諸法人(13%)