【北京時事】中国が軍事拠点化を進める南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島に、中国軍の病院船が新たに配備された。南シナ海の実効支配を強化するだけでなく、周辺国への医療支援も行い中国の影響力拡大を図る狙いがある。
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中国国営中央テレビによると、中国が人工島を造成したファイアリクロス(中国名・永暑)礁の軍港で11月30日、病院船「南医13」(満載排水量約4000トン)の就役式が行われた。南医13は、コンピューター断層撮影(CT)スキャンなどの設備や100床以上のベッドを備え、同時に3件の本格的な手術が可能。南沙諸島に設置された病院と連携し、周辺海域で勤務する要員に医療を提供する。
また、南医13は国際的な人道支援や海難救助も行う。医療インフラが整っていない地域に派遣し、中国のイメージアップを図るなど外交上のカードに利用する狙いがあるとみられ、共産党機関紙・人民日報系の環球時報英語版は「国際的な貢献により、中国は存在感を示すことができる」と強調した。
中国は初の遠洋病院船「和平方舟」(同約1万4000トン)を2008年12月に配備。昨年12月末時点で海外で9回活動し計43カ国・地域を訪問し、医療支援活動を展開してきた。
今年9月の米海軍大学校中国海事研究所による報告書は、和平方舟がカリブ海のグレナダを15、18年に訪れ、多くの人々に診断や治療を行ったと指摘。病院船の派遣は05年に台湾と断交したグレナダに対する「見返り」だったと分析した。