• 20年は新型コロナのパンデミックという究極のブラックスワンが出現
  • スタンダードチャータードの調査部門世界責任者が来年を予想

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)という究極の「ブラックスワン」イベントに見舞われた2020年に比べれば、21年は恐れることなどないように思われるかもしれない。しかし、スタンダードチャータードによればそうはいかない。

  調査部門の世界責任者、エリック・ロバートセン氏は金融市場のサプライズに関する年次リポートで、民主党が米上院で過半数を占める、米中の緊張緩和で人民元が1ドル=6元まで上昇する、石油輸出国機構(OPEC)実質崩壊で原油が1バレル=20ドルを割り込む、などを含め市場がびっくり仰天するような8つの「ありそうもない」イベントを挙げた。

  今年の市場はパンデミックの衝撃を受けたものの、当局による財政出動・金融緩和の緊急支援があったほか、来年は成長とインフレが回復するとのコンセンサスの下でイールドカーブがスティープ化、社債相場は上昇、米ドルは下落している。そうした中で新型コロナワクチンの普及が遅れれば、最大のショックとなるだろうとも予言した。

  ロバートセン氏が過小評価されていると考える来年のリスクは以下の通り。

1.米民主党がジョージア州の上院2議席の決選投票を制する
・民主党がテクノロジーセクターを標的とした増税や規制強化の法制化に着手する
・テクノロジー株が下落、供給増懸念で米国債利回りが急上昇する
2.米国と中国の関係が改善する
・中国が企業と消費者の購買力を高めるため人民元の上昇を容認する
・1ドル=6元まで元が上昇
3.金融および財政による刺激策で景気が過熱
・実物資産の値上がりを見込んで投資家とトレーダーが資金を銅などの市場に振り向ける
・銅が50%値上がりする
4.OPECが分裂する
・財政を補塡(ほてん)するため石油輸出国は合意済みの供給枠を守らず、OPECの協力体制が崩壊
・原油が1バレル=20ドルに下落
5.欧州の財政刺激策が頓挫
・ECBの景気支援能力がますます疑問視される-既に超低金利でバランスシートも膨張しているため
・年央までにユーロが1.06ドルまで下落する
6.米財務長官が強いドル政策を放棄
・議会が財政刺激パッケージで合意できない場合、イエレン次期財務長官が金融環境緩和でドルを口先介入で押し下げる
・ドルが15%急落
7.新興市場債のデフォルト(債務不履行)とソブリン格下げ
・社債のデフォルトがゆっくり始まり政府系の事業体に波及、ソブリン格付け引き下げにつながる
・新興市場株が4-6月(第2四半期)までに30%下落
8.バイデン米大統領が辞任
・共和党と民主党の調整がうまくいかないほか、抗議行動と社会不安の増大でバイデン氏が辞任する
・米国株の急激な調整、信用スプレッドの拡大、ドル下落が加速

原題:If 2020 Wasn’t Enough, StanChart Has Eight Big Risks for 2021(抜粋)