【ブリュッセル時事】難航する欧州連合(EU)と英国の自由貿易協定(FTA)締結交渉では、英海域での漁業権の扱いが残る最大の壁となっている。両首席交渉官による18日の協議でも打開に至らず、欧州議会が求めている「20日深夜まで」の合意を果たせるかは不透明だ。

 「正念場だ。合意の可能性はあるが、道は非常に狭い」。バルニエEU首席交渉官は18日の欧州議会で強調。特に漁業が「現在の大きな難題だ」と指摘した。

 双方はEUの漁船が英海域で一定の操業を当面続けられる移行期間の導入では一致した。しかし、その年数やEUが維持できる漁獲枠などをめぐり調整は難航。主権回復を唱える英国と、英海域への依存度が高いフランスなど対岸国との利害対立が解消されていない。

 ジョンソン英首相は18日、「われわれは既に多くの事をやった。EUの友人が間違いに気付くよう期待する」とEUに譲歩を要求。ゴーブ英国務相は「協議はクリスマス後まで続くかもしれない」と決着が年末間際になる可能性を示唆する。

 ただ、合意内容を十分に精査する時間がないと懸念する欧州議会は17日、合意が20日までに得られなければ年内にFTAを承認しない方針を表明した。交渉が21日以降にずれ込んだ場合、仮に年末に合意できてもFTA発効は間に合わず、英国がEUから「完全離脱」した年明けに大きな混乱が生じる恐れがある。

 欧州委員会や加盟国は、こうした事態を避けるため、合意したFTAを議会承認まで暫定適用することを検討している。EUの条約が定める措置で、加盟国間の決定だけで実施は可能だ。とはいえ、議会軽視とも言える措置に議員らの抵抗感は強い。強行すれば議会との関係に禍根を残すのは必至で、難しい決断を迫られる。