新型コロナ対策で緊急事態宣言が7日に発動されることが決まった。首都圏の1都3県の知事が菅政権に発令を要請したことがきっかけだが、メディアの報道を見る限りその裏で菅首相対小池都知事の醜悪ともいうべき政治的駆け引きが繰り広げられている。どこにもそんなことは書いてない。一市民としてことの成り行きを見ているだけだが、首都圏における第3次感染拡大は、大局を見失った政治家の饐えた臭いのする権力争いに起因しているとしか思えない。感染拡大の主要な現場はどこか、ウイルスを封じ込めるための有効な手段は何か。菅首相をはじめ政治家、官僚、メディア、専門家会議など誰もが責任をもって「正確な情報」を伝えない中で、緊急事態宣言の発令がまるで“特効薬”であるかのような扱いだ。感染拡大阻止に向けてどうして先手が打てなかったのか、政治家は何をやっていたのか、メディアは何を伝えてきたのか。これでは自粛要請に従順にしたがっている国民は救われない。
野党・立憲民主党の枝野代表は仕事始めで「日本の政治が機能していないことで、多くの皆さんに多くの苦労をかけ、命が失われている」と、政府・与党を批判した。その通りだと思う。だが、枝野氏の批判も状況を的確に抉り出してはいない。事態はそんな一般論が通用するほど生易しくない気がする。産経新聞には次の一節がある。「飲食店への時短要請の権限は都道府県にある。東京都は飲食店側の反発で逆効果になりかねないとして『午後8時まで』の要請をせぬまま感染が広がり、政府がその後始末をする形となった。こうした経緯に首相周辺は『飲食店を午後8時で閉じればいいのにやっていなかった。小池氏の失政だ』と不満をあらわにした」。権力者特有の責任のなすり合いである。感情的なものを含めて非常事態に直面してもなお政権と都知事が対立している。責任論などどうでも良い。国民をの命を救うためにどうして協調できないのだろうか。
上図は朝日新聞デジタルから借用した新規感染者数の推移を示したものだ。鋭角的に右肩上がりで急上昇しているのが東京都。神奈川県、埼玉県、千葉県がこれを追いかけるように上昇している。これとは逆に右肩下がりで感染者数を押さえ込んでいるのが北海道と大阪府だ。道府と1都3県は何が違うのか。鈴木・北海道、吉村・大阪府の両知事は緊急事態宣言という法的権限の裏付けがない中で、自らの責任で早くから飲食店の営業自粛要請に踏み切っている。自らの責任で行った決断が第3次感染の拡大抑制につながった。「それをしなかった」と菅首相は暗に小池知事を責めている。一方の小池氏は「宣言を発令せよ」と一種のパフォーマンスで政権に迫っている。一部メディアは「小池氏に押し切られた菅首相」との見出しを立てている。もうこの両者、「どっちがどっちだ」ではない、「どっちもどっちだ」。
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