米大統領選挙は上下両院の合同会議を経てバイデン氏の次期大統領就任が正式に決まった。ロイターによるとホワイトハウスはこれを受けて声明を発表。バイデン氏が大統領に就任する1月20日に「秩序ある政権移行」を約束した。これで、もめにもめた大統領選挙に決着がついが。だが気分はスッキリしない。この間、トランプ氏ならびにトランプ陣営が提起した問題が未解明のまま残っている。大統領選挙に不正はあったのか、なかったのか。中国の介入説は調査されたのか。民主党はもとより反トランプ派はメディアも含めて一切答えていない。もっともロイターをはじめ世界中の主要メディアはこの間、「トランプ氏は繰り返し選挙に不正があったと根拠なく主張」と繰り返してきた。不正は最初からなかったとの立場だ。どうやら事態はこの見方が正統であるかのように流れている。

6日の上下両院合同会議は、トランプ支持派が議会に「乱入」(主要メディア)」したため、一時中断された。テレビの映像を見る限り議会を取り巻いていたトランプ派の一部が議会に乱入したことは間違いない。だが、現場に居合わせた人たちの証言の中には「アンティーファらしき人が先導した」との声もあるようだ。トランプ派がネットでこうした見方を拡散している面もある。アンティーファは武装訓練を受けている左派の過激派組織だ。これも主要メディアから見れば「根拠のない主張」なのだろう。どちらの言い分が正しいのかわからない。問題は一つの事実をめぐる解釈が真逆に分かれていることだ。これは主張が異なっているということではない。良いとか悪いといいうことでもない。双方が事実を無視して自分の主張だけを信じているとしか言いようのない状態だ。

これがアメリカの分断の実態だろう。黒人や移民に寄り添い、リベラルを掲げる民主党政権の裏で、仕事を失い生きる希望をなくした多くの中下流層の白人たちがいた。トランプ氏はラスト・ベルト地帯にいたこうした人たちの支持を取り付けて大統領になった。生活苦に喘ぐ国民は党派を超えて存在している。にもかかわらず右派も左派も、既得権を抱えながら、自分たちの主張を拡散することに拘ってきた。メキシコ国境に壁を築いたトランプ氏の功績は、左右両派に内在するイデオロギーの壁を取り払ったことだろう。ディールで勝てればなんでもいい。一見無節操に見えるこの一念が、主流派やエリート、エスタブリッシュメントの常識と激突した。「盗まれた選挙」が対立を煽った。いずれにしろトランプ氏はこれを機に少数派に転落するだろう。この先、共和党も民主党も内紛含みだ。徹底的に政治のプロの常識をぶち壊せば、少数派にも復活の芽は出てくる。