日本政府が、韓国のソウル中央地裁が元慰安婦らの訴えを認め日本側に損害賠償の支払いを命じたことを受け、国際司法裁判所(ICJ)への提訴を検討していることが分かった。韓国の裁判権に服するのを避けるため控訴はしない一方、国際司法の場で韓国の不当性を明らかにする考えだ。政府関係者が8日、明らかにした。

 今回と同種の裁判では、イタリア最高裁が第二次大戦中にドイツで強制労働させられたイタリア人の訴えを認め、ドイツ政府に賠償を命じた例がある。その後、ドイツ政府は他国の裁判権に国家は服さないという「主権免除」に関する国際法違反としてICJに提訴し、2012年に勝訴した。

 日本政府内にはICJへの提訴について「相手の土俵に乗ることにつながりかねない」との懸念もある。政府は判決内容の精査や韓国政府の対応を見極めつつ、ICJへの提訴を検討する方針だ。

 ICJは領土問題など国家間の紛争を国際法に基づいて解決するための国連機関。裁判の実施は紛争当事国間の合意を原則とするため、日本が訴えても韓国側が拒否する可能性もある。