通常国会が開会し、焦点になっているコロナ関連法改正案の中身が公表された。第一次緊急事態が発令された最中に、罰則規定を盛り込んだ関連法の改正が必要だと書いた記憶がある。だから今回の改正案にイチャモンをつける気はないが、それでも何となくこれで感染拡大が防止できるのか、ちょっと不安になる。例えば、保健所の感染経路調査を拒否した場合「50万円の罰金」を課すとある。これは感染症法の違反であり刑事罰となる。時短や休業命令に従わなかった場合にも「50万円以下の罰金」が課されるが、こちらは行政罰に過ぎず前科としては残らない。このほかにも行政罰で済むものと刑事罰に問われるものが混在している。コロナに感染しただけで刑事罰に問われ前科者になるというのは、コロナに感染する以上に怖い気がする。一罰百戒という意味では、そこが改正案の狙いなのかもしれないが、なんとなく違和感がある。

駐車違反は行政罰だ。私ごとだが、買い物の際に駅前の駐車禁止区域に駐車して違反切符を切られたことがある。たまたま違法駐車排除週間か何かで、運悪く警察官に見つかってしまった。もう何年も前のことだが、罰金として1万円近く支払った気がする。法律違反を起こしたのだから文句を言える筋合いではないが、それでも個人的には「運が悪かった」と思った。そんなことをおくびにもださずに指定された金融機関で罰金を支払い反省したわけで、罰金の効果はてきめんだった。陽性者が感染経路の調査で保健所の担当官に喋りたくないようなケースもあるだろう。調査を拒否すれば罰金が課され前科者になる。それを避けるためにどうするか。調査に協力して本当のことは喋らない。そう、嘘をつけばいいのだ。そうなると、大事な感染経路は判明しない。これではもともこもない。肝心な感染経路は特定できない。嘘と証明するためのコストもバカにならない。

感染を防止する上で一番大事なのか、国民の協力だろう。せめて刑事罰ではなく行政罰でいいのではないか。最高50万円という罰金も高すぎないか。感染経路の調査は当たり前のことであり、感染者が調査に応じるのは国民としての義務だろう。大事なのはそこで嘘をついてはいけないということだ。仕事をサボって映画を見ていたのに、公園にいたと嘘の供述をした場合は、5万円の行政罰を科す。このくらいでいいのではないか。個人的には感染源となっている特定の地域に限ってロックダウンを実施すべきだと思うが、それを可能にするような条項も見当たらない。感染防止で大事なのは、感染現場の特定である。保健所はクラスターを発見したら濃厚接触者を割り出して隔離する、これが日本の伝統的な感染症対策である。感染者が拡大してこのシステムが機能しなくなった。機能しなくなった途端に感染防止対策が混迷しはじめた。大事なのは発想の転換だろう。旧態依然としたやり方ではコロナウイルスに勝てない。