日本時間の本日未明、米国の第46代大統領に民主党のジョー・バイデン氏が就任した。2万5000人にのぼる州兵が鉄柵やバリケードと共にガードを固める中、本来の主役であるべき国民が不在のまま、華麗なる就任式は挙行された。宣誓式を終えたあと就任演説を行ったバイデン新大統領は、「きょうこの日、民主主義が勝利した」と高らかに宣言した。軍隊とバリケードに守られた民主主義の復活である。なんという矛盾だろうか。この日、就任式に身を連ねた歴代大統領や政府関係者、学者やメディアなどごく一部のエリートや既得権益者、エスタブリッシュメントなどインサイダーな人々にはこの「矛盾」は全く見えないだろう。個人的にはこの日、アウトサイダーであったトランプ氏によって破壊された既成勢力の互助会組織が復活したようにみえる。
トランプ陣営が主張していたDS(ディープ・ステート)が何を意味するのか、よくわからない。日本的な感覚で考えれば政治家や財界、官僚など国家の統治機構を牛耳っている政治勢力、いわゆる既得権益保有者が暗黙のうちに形成している支配システムということだろう。米国の場合はここに軍事関係者が名を連ねる。なんびともDSの意向を無視して行動することは許されない。闇の奥に影もなく存在する国家、あるいは既成勢力の意識に潜在する絶対的な統治機構、おそらくそんなイメージではないか。DSの完全なアウトサイダーであるトランプ氏は、危険極まりない大統領だった。ビックテックをはじめ世界中の主要メディアは総力を上げてトランプ潰しに奔走した。ツイッターがトランプ氏のアカウントを永久追放したのはその象徴だろう。DS側にとって就任式は危険なイベントでしかない。不安感と恐怖心に苛まれ軍隊や鉄柵、バリケードに必要以上に頼らざるを得なかった。民主主義が勝利したわけではない。DSが辛うじて既得権益を取り戻したのだ。
DSは世界中の国々に潜在している。トランプ氏によって破壊されたDSの既得権がバイデン氏によって蘇る。ロイターによると世界中の指導者がこの日、米国にエールを送った。欧州委員会のフォンデアライエン委員長は「ホワイトハウスに友人」がいると発信、フランスのマクロン大統領は、「われわれは米国と共にある」と歓迎した。WHOのテドロス事務局長は「一段と健康で、公平で、安全で、持続可能な世界に乾杯!」とツイッターに投稿した。トランプ氏の攻撃から解放された喜びが伝わってくる。個人的にDSは世界の指導者の「相互扶助機構」だと思っている。表面的に対立しても裏でちゃんと手を握っている。お互いの権益は絶対に犯さない。DSを攻撃する部外者は協力して徹底的に排除する。パーラーのサーバー提供を拒否したアマゾンはこの日、ワクチン配布でバイデン政権に協力すると申し出た。DSが勝利して国際舞台では穏やかな日々が復活するだろう。だが、格差は拡大し、人種差別は無くならない。世界が平和になることもないだろう。エスタブリッシュメントの既得権だけは守られる。
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