【ワシントン時事】バイデン米政権が、看板政策に掲げる地球温暖化対策について発足早々から積極的に発信している。新設の大統領特使に就いたジョン・ケリー元国務長官は、温室効果ガスの排出源である石炭火力発電をめぐり「発電所に資金を拠出したり、発電能力を拡大したりしている国がある」と批判した。化石燃料依存からの脱却に向け、日本や中国に一段の対応を迫る可能性がある。

 ケリー氏は、オバマ政権で温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」のとりまとめに尽力した民主党の重鎮。政権発足翌日の21日、主要20カ国・地域(G20)の経済界トップによる会議「B20」のオンラインイベントに出席した。米国は中国に次ぐ世界2位の温室ガス排出国。

 世界の総発電量に占める石炭火力の比率は38%と、主要電源で最も多い。日本や中国では発電所の新設が続く。日本政府は昨年、二酸化炭素(CO2)排出量の多い旧式の発電所を2030年度までに休廃止する方針を決めた。

 ケリー氏はイベントで、各国・地域が進めている石炭利用の段階的な廃止を「現在の5倍のスピード」で行うべきだと強調した。国連のグテレス事務総長も日本に対し、石炭火力の全面停止を繰り返し求めている。

 一方、米財務長官に指名されたイエレン前連邦準備制度理事会(FRB)議長は、議会に宛てた21日付の書簡で、温暖化対策を怠った国や企業に炭素税を導入しなければ「気候変動の危機は解決できない」と訴えた。同氏は炭素税の推進派で知られ、欧州も同様の構想を持つ。米国の政権交代を機に、日本は規制対応に追われることになりそうだ。