2万2000人を超す死者・行方不明者を出した東日本大震災から11日で10年となる。津波で被災した岩手、宮城、福島3県で行われた高台への集団移転は計約1万2500戸が対象となる大事業となった。しかし、宅地開発に伴って、インフラの新設を余儀なくされ、上下水道と道路の維持管理費は震災前より年間131億円(50%)増えた。人口減少が続く被災地では、費用の捻出が課題となる。
読売新聞は1~2月、3県の沿岸37市町村を取材、上下水道と道路の延長や維持管理費を震災前後で比較した。その結果、簡易水道を含む上水道が1081キロ(8%)、下水道が997キロ(10%)、市町村管理の道路が613キロ(3%)増えたことがわかった。三つの総延長は2691キロで、東京―グアム間を超える距離になる。
被災地では地盤を高くし、現地再建する「かさ上げ」などの復興事業が行われた。高台移転は造成した住宅地へ水道管や道路をつなげる必要があり、距離が増えた。
県別にみると、宮城県が上下水道、道路とも最も距離が伸びていた。高台や内陸に移転した地区は186で、岩手県の88、福島県の47より多かった。
被災した上下水道管や道路の復旧費や新設費は、復興交付金などの国費で賄われた。一方、維持管理費は自治体の負担になる。
上下水道と道路を40年後に更新した場合の費用を算出していた自治体は34市町村あり、その総額は2兆2305億円に上る。34市町村の2018年度予算の歳入額の合計(1兆9084億円)を上回る。人口減が続く被災地の自治体からは「市民税や固定資産税の収入が減り、新たな予算の確保は難しい」(岩手県大船渡市)との声が上がる。
一方、東京電力福島第一原発事故の避難指示区域が残る福島県大熊町では、下水道管の93%にあたる65キロが休止になった。放射性物質で汚染された土砂を一時保管する中間貯蔵施設(約1600ヘクタール)が住宅地跡に建設されたためだ。
自治体施設の維持管理に詳しい岩手大の南正昭教授(都市計画)は「この10年間は、街の生活機能を復活させる必要があった。今後はインフラ維持にかかる費用を下げる努力が自治体に求められる。中長期的に街の機能を集約することなども考えるべきだ」と話す。