10年前の3月11日、東京電力福島第一原子力発電所は巨大津波により電源を喪失し、その後、3基の原子炉が次々にメルトダウンを起こす世界最悪レベルの事故に至りました。国が最長40年かかるとする廃炉はそのおよそ4分の1の期間が経過しましたが、作業は強い放射線に阻まれて遅れが目立ち、最大の難関とされる「燃料デブリ」の取り出しも今後、技術開発などが必要で具体的な道筋は見えていません。

廃炉の最大の難関とされるのは、事故で溶け落ちた核燃料、いわゆる「燃料デブリ」の取り出しです。

1号機から3号機の原子炉の中や原子炉を納める格納容器の中に溶け落ちているとみられ、3基の合計は880トンにのぼると推定されています。

国と東京電力はことし、まず2号機で、デブリの取り出しを始める予定でしたが、新型コロナウイルスの影響でデブリ取り出しに使うロボットアームの開発が遅れているとして、少なくとも1年開始を遅らせると発表しました。

最初に取り出すデブリの量は数グラム程度です。今後、極めて強い放射線を発する880トンものデブリをどう取り出していくのか、技術開発も必要で具体的な道筋は現時点では見えていません。

また、デブリは水を入れ続けて冷却しなければならないため、いまも毎日、およそ140トンの汚染水が発生しています。汚染水は、ほとんどの放射性物質を取り除く処理をしていますが、除去が難しいトリチウムなど一部の放射性物質は残ります。

この処理した水はタンクにためられていて、その数はこの10年で1000基を超えおよそ124万トンが保管されています。

経済産業省の小委員会は、去年、この水の処分について「基準以下に薄めて海か大気に放出する方法が現実的で、海のほうがより確実に実施できる」などとする報告書をまとめましたが、地元の漁業関係者などの風評被害への懸念は根強くあります。

政府は、タンクをつくる敷地がひっ迫する中、いつまでも方針を決めずに先送りすることはできないとしていますが、地元を含めたより多くの関係者の納得が得られる形で処分方針を決定することができるのか、今後の政府の対応が問われています。

さらに、今後は、廃炉に伴って発生する大量の放射性廃棄物の問題にも向き合わなければなりません。

福島第一原発の廃炉では、すでにがれきなどの放射性廃棄物がおよそ47万立方メートル発生し、敷地内で保管を続けていますが、国と東京電力は廃炉作業の終了までにどれくらいの量の放射性廃棄物が発生するのか、そしてそれをどこでどのように処分するか、見通しを示せていません。

こうした課題を抱える中、廃炉作業を残りの期間で終えることができるのか、国と東京電力の取り組みが問われています。