長期金利は上昇。日本銀行が長期金利の許容変動幅を拡大したことを受けて売りが優勢となった。ただ、変動幅の拡大が小幅にとどまったことから債券相場への影響は限定的との声も出ていた。

  19日午後3時現在、債券市場で新発10年物国債利回りは0.115%と前日終値を1.5ベーシスポイント(bp)上回った。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは、日銀は長期金利の許容変動幅を小幅拡大したが、新たに金利上昇を抑制する制度を導入し、「大幅な金利の上昇は容認しない姿勢を示した」と指摘。政策点検の結果が長期金利に与える影響は「当面大きくない」との見方を示した。

  日銀はこの日開いた金融政策決定会合で昨年12月に表明した各種施策の点検を行った。ゼロ%を目標とする長期金利の許容変動幅は「プラスマイナス0.25%」と明記。同時に、金利の大幅な上昇を抑制するため、固定金利で国債を無制限に買い入れる金融調節を一定期間、連続して行う「連続指し値オペ制度」を導入した。

・新発10年債利回りは前日比1.5bp高い0.115%。一時0.12%まで上昇
・長期国債先物6月物の終値は15銭安の150円98銭。日銀の会合結果を受けてプラスに浮上した後、すぐに下落に転じ、一時24銭安の150円89銭まで下落した

  長期金利の変動幅を巡り、黒田東彦総裁は5日の国会答弁で「拡大する必要があるとは考えていない」と発言。8日には雨宮正佳副総裁が「緩和効果が損なわれない範囲内で金利はもっと上下に動いてもよい」と述べた。正副総裁発言の温度差に市場が混乱する一幕もあったが、ブルームバーグ調査では変動幅拡大はないとの予想が8割を占めた。

  東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは変動幅の拡大に対し「ネガティブに反応する必要はない」と指摘。日銀は連続指し値オペ制度を導入することで「長期金利のキャップ(上限)を印象づけたかったのだろう」と述べ、長期金利は今後も0.25%に届かない可能性が高いとみる。

  日銀が政策点検で、超長期金利の過度な低下は「マインド面などを通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性」に言及したことを受け、市場の関心は来月の国債買い入れ予定に向いている。佐野氏は「超長期債の買い入れが減額されたり、日程が非公開化されれば、一時的に超長期債が売られ利回り曲線がスティープ(傾斜)化する可能性がある」としている。

新発国債利回り(午後3時時点)

2年債5年債10年債20年債30年債40年債
-0.140%-0.085%0.115%0.510%0.670%0.700%
前日比+0.5bp+1.0bp+1.5bp+2.5bp+1.0bp横ばい