東京五輪・パラリンピック組織委員会と政府や東京都、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)の代表者らは20日、大会開催を巡り協議し、海外からの観客の受け入れを断念することで正式合意した。組織委の橋本聖子会長が協議後の記者会見で明らかにした。

  組織委の発表文によると、世界の新型コロナウイルスの感染状況は変異株の出現を含めて厳しい状況が続いており、世界各国で国境をまたぐ往来が厳しく制限されている状況下では、今年の夏に海外から日本への自由な入国を保証することは困難だと説明。「すべての参加者及び日本の国⺠にとって、⼀層確実に、安全で安心な大会を実現するための結論」だとした。

  橋本会長は会見で、「東京大会はこれまでとは全く異なる大会となるが、アスリートが卓越したパフォーマンスを持って、人々の心を動かす本質は変わらない。今の時代にふさわしい方法で人々をつなぐことができるよう、具体的な仕掛けの検討も進める」と述べた。協議はオンライン形式で丸川珠代五輪相、小池百合子都知事、IOCのトーマス・バッハ会長らが参加した。

  丸川五輪相は記者団に対し、「IOC、IPCの方からは全面的に日本側の判断を支持するというコメントがあった」と発言。国内の観客については新型コロナの変異株の状況がどうなるか分からないとした上で、「4月に判断することになる」と述べた。

  海外で販売済みのチケットの払い戻し手続きも進める。組織委の武藤敏郎事務総長はチケットの枚数は東京五輪で60万枚、パラリンピックで3万枚に上ると述べた。組織委によると、東京大会の国内販売済みチケットは五輪約448万枚、パラリンピック約97万枚の計約545万枚。

  3日の5者協議では海外観客受け入れの可否を3月中に最終的に判断することで一致。橋本会長はホテルや旅行業から早期の判断を求められており、聖火リレーが始まる25日までに判断する意向を示していた。今後は4月中に決める方針の国内観客数(会場動員)の上限が焦点となる。

  新型コロナの変異株への感染も広がる中、大会開催は4か月余りに迫った。組織委などにとって今後は観客以外の外国選手や大会関係者が入国する際の水際対策に加え、大会での徹底した感染対策が課題となる。これらは国内観客の上限を判断する上でも重要な要素だ。

Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg

  日本体操連盟などは9日、東京五輪テスト大会を兼ねて5月4に有明体操競技場で行われる予定だった個人総合のワールドカップ東京大会の中止を発表。読売新聞は同日、組織委がサッカー施設「J ヴィレッジ」(福島県楢葉町、広野町)で予定されている聖火リレーの出発式典を無観客で行う方針を固めたと報じている。

  加藤勝信官房長官は9日、五輪開催も見据え、海外からの入国者の受け入れについて、入国前の検査を含む水際対策や入国後の健康状態を把握するためのスマートフォンアプリの開発担当に木原稔首相補佐官を充てたと明らかにした。官房長官の下で関係省庁との調整役を担うという。

  組織委の橋本会長は、安心安全な大会を最優先し、巨大化したスポーツイベントを競技中心に見直した「東京五輪モデルをコロナ後も継承」することを提案している。

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