ウイグル人に対する人権問題に関連してユニクロや良品計画が批判の的になっている。両社とも良質な新疆綿を原料にした製品を販売しており、これと人権問題が真っ向からぶつかる展開になっている。昨日良品計画は決算を発表した。記者の質問は業績より人権問題に集中。ブルームバーグによると良品計画は度重なる記者の質問に、「全てはリリースの通り」との回答を繰り返したという。同社が使用する綿を栽培する新疆地区の約5000ヘクタールの農場についてリリースは、「畑や作業者のプロフィル、人員計画を把握しつつ第三者機関による現地での監査も行っており、行動規範や法令に対する重大な違反は確認していない」と強調する内容。だが、このリリースで同社に対する世界の雰囲気が和らぐことはないと思う。矛盾と葛藤と板挟み。まさに人権問題の深刻さがここにある。

一方のユニクロ。ブルームバーグによると、8日の決算発表会見で同様の質問が相次いだ。そのたびに柳井正会長兼最高経営責任者(CEO)は、「政治的な質問にはノーコメント」と繰り返したという。同社の売上は国内と海外がほぼ半分。海外の中心はもちろん中国。ESG(環境、社会、企業統治)投資を意識して環境整備を積極的に行なっているユニクロだが、人権問題が新たな障害として経営戦略に立ちはだかる可能性もあるようだ。11日付の日経新聞には「ESGからESGLへ ユニクロは衣料、ソニーは農業で挑む」と題する記事が掲載されている。環境に配慮した経営戦略を紹介する記事だが、ダウンジャケットに使用する羽毛の再生に取り組んでいるユニクロの挑戦が紹介されている。ESGプラスLIFE(生命・生活)、これが「ESGからESGLへ」というタイトルになっている。ESGが脚光を浴びる中で、一歩先をゆくユニクロならではの取り組みということになる。

ユニクロの先駆的な挑戦にイチャモンをつけるつもりはないが、この記事を読みながもう一つの要素が必要になってくるという気がした。人権である。Human rightsを起業統治にどうやって取り込むのか、企業にとっては避けることのできない課題になりつつある。これからはESGL以上にESGRが重要になるだろう。新疆綿の栽培・流通に良品計画として抜かりはないとしても、クレディ・スイス証券アナリストの風早隆弘氏は記事の中で、「本質的には人権を侵害している共産党政権に納税しても良いのか」という問題が残ると指摘している。企業は人権で攻められると防ぎようがない。バイデン政権が誕生して世界中がグリーンと人権を全面に掲げるようになってきた。明日未明には日米首脳会談が実現する。ここでも人権が重要なテーマになる。人権か経済か、企業だけではない。政府も重い課題に直面している。