H&M, Nike and Muji Face Boycotts in China as Xinjiang Dilemma Deepens
Photographer: Qilai Shen/Bloomberg

新疆ウイグル自治区の人権侵害を巡り、「無印良品」を展開する良品計画の14日の決算発表会見では「新疆綿」に対する考えを問う質問が相次いだ一方で、同社幹部は「全てはリリースの通り」との回答を繰り返し言及を避けた。

  会見に先駆けて同社は同時に声明文をウェブサイト上で発表。無印良品の綿を栽培する新疆地区の約5000ヘクタールの農場などについては、畑や作業者のプロフィル、人員計画を把握しつつ第三者機関による現地での監査も行っており、同社の行動規範や法令に対する重大な違反は確認していないと強調していた。

  「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングも8日の決算発表会見で同様の質問が出るたびに、柳井正会長兼最高経営責任者(CEO)は「政治的な質問にはノーコメント」と繰り返した。両社にとって中国は海外で最も売り上げが高い市場となっている。

  中国市場の存在感が大きい一方で、環境・社会・ガバナンス(ESG)を重視した投資の重要性が増していることから機関投資家に懸念を抱かれることを避ける必要もあり、両社は人権問題と中国世論の反発懸念の板挟みとなっている。

不買運動

  米国と英国、カナダ、欧州連合(EU)が新疆ウイグル自治区の少数民族ウイグル族に対する人権侵害を理由に対中制裁を発動したことを受け、中国ではスウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)など欧米の小売企業に対する不買運動が広がっている。

  良品計画が発表した中期経営計画では、2024年8月までに中国大陸で年間50店のペースで出店の純増を目指す方針が示された。Fリテイリについても、アナリストは来期(22年8月期)の中国での売上高が日本国内を上回ることを予想している。

  現在、無印良品は日本国内では製品に新疆綿と表示しない一方で、中国国内で販売される製品には新疆綿と明記している。14日の会見では表示を使い分ける理由を問われても、良品計画は声明文以上の答えを示さなかった。

  クレディ・スイス証券アナリストの風早隆弘氏は、中国が標的としているのは中国に対し人権問題で制裁を課している欧米であり、「現時点で日本企業は欧米に比べてリスクが少ない」とみる。良品計画とFリテイリは原料の流通経路を生産段階から追跡できているので、労働問題で特にリスクに感じるところはないと述べた。

  本質的には「人権を侵害している共産党政権に納税しても良いのか」という問題が残る。しかし、そこまで踏み込むと「テスラだろうが、ユニクロだろうが、ESGの観点から中国で事業を営む企業が投資対象とされない」ことになり、「この話が始まると、大変な話になる」と述べた。

株価は下落

  良品計画の15日の株価は一時前日比7.2%安の2378円と20年7月10日(7.7%)以来の日中下落率となった。

  しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は「業績面での進捗(しんちょく)が物足りない」ことが株価下落の一番の要因とした上で、新疆綿の使用で投資を判断する動きにはなっていないと述べた。そして、株式市場では政治的な問題などは短期的に反応することはあっても「逆に買い場になるチャンスが過去の歴史」との見方を示した。