[ワシントン/チューリヒ/台北 16日 ロイター] – 米財務省は16日、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表し、スイスとベトナムに加え、台湾について、為替相場を操作している可能性がある基準を満たしたとしたものの、「為替操作国」に指定する十分な証拠は得られなかったとした。
財務省はスイス、ベトナム、台湾について「エンハンスト・エンゲージメント」を行うと表明。為替相場の過小評価と対外不均衡の過小評価の基調的な原因に対応するために特化した行動計画を策定するよう呼び掛ける。こうしたことが、3カ国・地域が為替相場を操作したか判断することの一助となるとした。
イエレン財務長官は声明で「自国通貨の相場を人工的に操作しようとする外国政府の動きに、財務省は絶えず目を光らせている」とした。
今回の報告はバイデン政権下で初めて。トランプ前政権下で公表された2020年12月の為替報告書で、財務省はスイスとベトナムを為替操作国に指定し、台湾、タイ、インドを通貨政策の「監視リスト」に追加していた。
今回の報告書では、監視リストに中国、日本、韓国、ドイツ、アイルランド、イタリア、インド、マレーシア、シンガポール、タイ、メキシコの11カ国を掲載。このうちアイルランドとメキシコ以外は昨年12月の報告から掲載されていた。
中国に対しては、外国為替市場への介入、為替レート管理システムの政策目標、中国人民銀行(中央銀行)と国有銀行の外国為替相場を巡る活動の関連性、オフショア人民元市場での活動に関する透明性の向上を呼び掛けた。
米財務省当局者は今回の報告書について、新型コロナウイルス感染拡大に起因する貿易と資本フローの大幅な阻害に加え、コロナ禍に対応するための各国の財政・金融政策を考慮したと説明。コロナ禍がなければ、スイス、ベトナム、台湾に対する対応を含め「異なる結果が出ていた可能性がある」と述べた。
為替報告発表を受け、スイス国立銀行(中央銀行)は「スイスはいかなる為替操作も行っていない」と表明。引き続き市場介入を行う用意があるとの立場を示した。
台湾中央銀行の当局者は匿名を条件にロイターに対し、米国が台湾を為替操作国に指定しなかったことは、台湾が米国と効果的に対話を続けていることを示していると指摘。米当局は台湾の「特別な状況」を理解しているとの見方を示した。
ベトナムは今のところ反応を示していない。
マッコーリー・グループのグローバル金利・為替ストラテジスト、ティエリー・ウィスマン氏は「規則に基づく決定というより、政治的な決断との印象を受ける」とし、「バイデン政権は中国との対応で重要になる同盟国を刺激しないようにしているようにみえる」と述べた。