【ニューデリー時事】ネパールやインド北部のヒマラヤ山脈沿いで昨年後半から今年にかけて、異例のペースで森林火災が頻発している。この地域では降雨が減少しており、住民の不安は募る。英BBC放送によると、3月以降、約20人が死亡している。火災で二酸化炭素を吸収する森林が失われ、一層の温暖化が進む悪循環を招く恐れもある。

 ネパールはヒマラヤに沿って国土が広がる。南部ダン地区の住民ポカレルさんは3月、真夜中に森林火災が村に迫っていると告げる近所の住民の声で目を覚ました。「火勢を抑えようとしたが、どうにもならなかった。自宅は助かったが、家畜用の干し草が全て燃えてしまった」とロイター通信に語った。この半年間、村にはほとんど雨が降らなかったという。

 ネパール政府統計によれば、昨年11月~今年4月上旬の森林火災は2700件を超え、前年の14倍に達した。当局者はAFP通信に「9年前に統計を取り始めてから最も多い」と説明した。

 被害はインドでも広がっている。地元紙ヒンドゥスタン・タイムズは9日、北部ウッタラカンド州で昨年10月~今年4月上旬、989件の森林火災が発生し、「生物多様性のある豊かな森林」約1300ヘクタールが失われたと報じた。2000年以降、ウッタラカンド州では約4万8000ヘクタールの森林が焼失したとされる。

 ロイターは、住民が森林とその周辺で食料や薪を採取したり、牧畜をしたりして生活している現状を指摘。火災により生活基盤が破壊されたと深刻な被害を伝えた。

 BBCは専門家の見解として「気候変動が森林火災の直接の原因ではないが、この地域の乾燥を助長している」と報道。降雨や降雪が減ったことで、焼き畑農業などの火が燃え広がりやすくなったと分析している。