新型コロナウイルスの変異株のうち、感染力が強い「N501Y」について、人の細胞の表面にある受容体たんぱく質に結合する部分の立体構造を解明したと、カナダのブリティッシュコロンビア大の研究チームが8日までに発表した。変異前に比べて結合しやすくなる化学的性質が確認される一方で、この結合を妨害して感染を防ぐ人の中和抗体の働きには、大きな影響がないとみられることが分かった。

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 変異パターンは他にもあり、立体構造の解明はワクチンの有効性を判断したり、治療薬を開発したりするのに役立つと期待される。論文は米科学誌プロス・バイオロジーに掲載された。

 新型コロナウイルスは突起状のスパイクたんぱく質が人の細胞の表面にある受容体たんぱく質「ACE2」に結合して侵入、感染する。「N501Y」はスパイクたんぱく質を構成するアミノ酸のうち、501番目のアスパラギン(N)がチロシン(Y)に置き換わる変異パターン。日本で急拡大中の英国型のほか、南アフリカ型やブラジル型の変異株に含まれる。

 研究チームは、N501Yの変異があるスパイクたんぱく質を人のACE2に結合させた上で、凍結して解像度を高める「クライオ電子顕微鏡法」で観察した。その結果、N501YのチロシンがACE2側アミノ酸のチロシンとリシンの間に入り込んで結合することが判明。チロシンには炭素原子が六角形に並ぶベンゼン環があり、ベンゼン環同士が引き合って変異前より結合する力が強まっていた。

 感染やワクチン接種により生じる中和抗体のうち2種類について、N501Yの変異があるスパイクたんぱく質に取り付く様子を観察したところ、変異前に比べて1種類は変わらず、もう1種類は少し影響を受ける程度だった。