新型コロナウイルスの急激な感染拡大を受け、北海道の鈴木直道知事は13日、コロナ対応の特別措置法に基づく「まん延防止等重点措置」の対象地域について、現在の札幌市に加え、同市周辺の石狩地域の市町村と小樽市、旭川市に拡大する方針を明らかにした。週内にも対策本部会議を開いて正式に決定する。感染状況が深刻な札幌市については、同市に限定した緊急事態宣言の適用を国に要請した。

 鈴木知事は13日の道議会臨時会の答弁で「医療崩壊を防ぐため、全道を対象とした北海道医療非常事態宣言を速やかに発出し、全ての道民に対する不要不急の外出自粛を要請する必要がある」とし、「感染状況が札幌市に次いで厳しく、同市との人の行き来が多い石狩管内と小樽市、同様に感染が広がっている中核市の旭川市を重点措置の対象区域とする必要がある」と述べた。

 道内ではこの日、新規感染者が712人、うち札幌市は499人確認され、それぞれ2日連続で過去最多を更新した。

当初の方針から適用拡大

 道は9日から31日まで札幌市を対象に「まん延防止等重点措置」に基づく対策を実施しているが、感染力が強いとされる変異ウイルスの影響で全道に感染が広がっている。

 道は重点措置の対象拡大について、当初は札幌市に近い石狩管内の市町村を対象にすることを検討したが、やはり札幌に近い小樽市や人口が多い旭川市でも対応が必要と判断した。新たに対象となる市町村には、飲食店の午後8時までの時短や酒類提供の終日自粛など、札幌市と同等の措置がとられる見込みだ。

 13日時点で直近1週間の人口10万人あたりの新規感染者数は、道内全体では60・85人で、道独自の警戒ステージで最も深刻な「5」の目安となる「25人」を大きく上回る。札幌市は同110・2人と目安の4倍以上にもなっている。「25人」は国に緊急事態宣言の発出を要請する目安でもあり、深刻な状況だ。

 道議会では、さらに一段対策を強化し、緊急事態宣言の発出を国へ要請すべきではないかとの質問が相次いだ。緊急事態宣言の対象地域では、店舗などに休業の要請・命令もでき、命令に従わない場合は30万円以下の過料を科せられるなど、「重点措置」より強い対応が可能になる。

 緊急事態宣言の発出は都道府県単位で、宣言に基づく措置は都道府県全域に及ぶ。鈴木知事は「緊急事態宣言は首相が決定するもの。道内の厳しい状況については国と協議をしている」と述べる一方、道では感染状況が札幌市と他地域では異なることから、「緊急事態措置の地域を限定した運用などについて改めて国に求めていく」と発言。13日夜、道は札幌市に限定した緊急事態宣言の発出を国に要請したと発表した。(中野龍三)

札幌市長「すぐに緊急事態宣言を」

 札幌市は13日、新型コロナウイルス感染症対策本部会議を開き、秋元克広市長は「感染の拡大傾向がいっそう顕著になっている。市民の命や健康を脅かすリスクが極めて高く、今すぐにでも緊急事態宣言を発令すべき状況にある。国や道に働きかけていく」と述べた。

 市内では感染急増で一段と医療提供体制が逼迫(ひっぱく)している。コロナ病床は連休明けに20床増やし410床としたが、すでにほぼ満床だ。市は今後も1日の新規感染者数が400人規模の状況が続くとみており、患者の急増に病床追加が追いついていない。今後は入院できず自宅療養せざるを得ない患者が増えるとみて、患者宅に症状緩和の薬を届けることを検討している。

 秋元市長はかねて感染状況に危機感を募らせており、市が重点措置の対象に決まった7日も「新規感染者数や医療提供体制は、まさに緊急事態宣言レベル」と述べていた。市内で飲食店の酒類提供自粛要請や終電繰り上げなどが始まったのは12日から。その翌日の13日も新規感染者数は過去最多を更新、状況は悪化するばかりだ。

 感染者からの聞き取りや濃厚接触者の調査を行う保健所職員も不足している。札幌市はこの日の対策本部会議で、全ての区役所に自宅療養者の健康観察などにあたる対策室を設けることを決めた。区役所職員を保健所業務に振り向け、保健所の人員を17日から、現状の約3倍の約千人体制にする。このため、区役所業務のうち住民票や印鑑証明の発行など一部業務を停止・縮小する。(佐藤亜季)

小樽、旭川にも危機感広がる

 道は「まん延防止等重点措置」の適用対象を、札幌市に加え、同市近隣の小樽市や石狩振興局管内の市町村、道内第2の都市の旭川市にも広げる。

 道に適用を求めていた小樽市の迫俊哉市長は13日の臨時会見で、「小樽でも感染者数が急増しており、早いうちに手を打つ必要がある」と語った。同市は道に対し、市内でも酒類提供自粛を要請するよう求めていた。「市内の飲食店は札幌からの予約が入っている店もあり、経営者の皆さんは心配されていると耳にしている」と語った。同市は独自の感染対策として、公共施設の休館や市職員の時差出勤、学校の運動会の延期なども行う方針。

 石狩振興局管内の千歳市の山口幸太郎市長も13日、臨時会見を開き、正式に重点措置の対象になれば「道と十分協議を行い、事業者などへ必要な協力を求めていく」と話した。5月の市内での感染者数は12日時点で56人と、4月の21人の倍以上。市は14日から31日までの独自対策として、市内約80の公共施設を原則使用中止にする。ただ、23日告示の市議選で投開票所となる公共施設は予定通り使用する。

 旭川市も重点措置の対象追加について道と水面下で協議を進めていた。13日午前の市議会委員会で市保健所の担当部長は、「市内では市中感染が増え、変異株も抑え切れていない。今までと違うステージに来ている。何らかの強い措置をとる必要がある」との認識を示した。(鈴木剛志、志田修二、本田大次郎)