自衛隊や米軍の基地など安全保障上、重要な施設に隣接する土地の調査で、中国などの外国資本が関与した可能性がある買収や売買計画を、日本政府が少なくとも700件確認したことが13日、分かった。政府関係者が明らかにした。中国本国や傘下の当局などが安保上の動向把握などを目的に買収に関与した可能性もあり、政府は関係当局に実態解明を指示した。

 政府は昨年、外国資本による土地売買の本格調査を開始。防衛施設の周辺10キロ以内や国境離島などで、中国系資本などが買収に関わった可能性がある土地の把握に乗り出し、昨秋までに中国系資本が関与した可能性がある安保上重要な土地買収などが全国で約80件に上ることが判明した。その後、集中的に調査を進め計700件あることを把握した。

 複数の関係者によると、確認されたのは自衛隊や米軍の基地、海上保安庁や宇宙開発関連施設などに隣接した土地の買収やその計画。対象地の全景が一望でき、日米の艦船や航空機の運用のほか、関係者らの動向が把握される恐れもある。

 神奈川県では、中国政府に関係がある可能性がある人物が米軍基地直近の土地を購入し、マンションを建設していたことが判明。この人物は基地を見渡せる高層建物を複数、所有していることも分かり、米国側も関心を寄せているという。

 また、米軍基地が見渡せる沖縄県の宿泊施設に、中国国営企業の関係者とみられる人物が買収を打診したことを把握、当初は「米系資本」を名乗っていた。鳥取県にある自衛隊基地に隣接した用地でも、中国系のグループ企業が取得を目指したとされる事案が確認された。

 関係者によると、このほかにも、日本周辺の空域や海域を監視するレーダー関連施設、宇宙開発施設周辺などで、同様の売買情報などが報告されている。電波妨害などが行われれば重大な悪影響を及ぼすケースもあるという。

 今国会では、外国資本などによる土地利用規制法案が審議。防衛施設や原子力発電所などの重要インフラの周囲約1キロと国境離島を「注視区域」に、より重要度の高いエリアを「特別注視区域」に指定し、国の調査対象に設定した上で、不適切利用を確認した際には中止を勧告・命令するとしている。また、特別注視区域の売買は、当事者の人定や、利用の目的を事前に届け出るよう義務付ける。