世界経済は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)からの回復が力強さを増しているが、多くの地域が置き去りになり国や地域の格差拡大が助長されかねない。経済協力開発機構(OECD)が31日公表した経済見通しで指摘した。
OECDは2021年の世界経済成長率予想を5.6%から5.8%に上方修正した上で、大きな格差によって、生活水準が長期にわたり危機前の水準に戻らない人も出てくると警告した。
OECDの新たな経済見通しによると、アルゼンチンやスペインなどの国では、危機の始まりから1人当たり国内総生産(GDP)が回復するまでに3年余り要すると見られる一方、米国では1年半、中国では1年弱にとどまる。
チーフエコノミスト、ローレンス・ブーン氏は「経済見通しが明るさを増しているのは多少安心できるが、極めてまだらな形である点は幾分不安だ。パンデミック後の十分な成長が達せられないか、広く共有されないリスクが高まっている」と付け加えた。
OECD経済見通し:今年の世界成長率5.8%-米国6.9%、中国8.5%
OECDは各国政府による格段に迅速で効果的な政策支援がここに来て貿易や製造業、個人消費の回復を後押ししていると評価した上で、十分なワクチンの確保や新興国・低所得国の支援に失敗すれば、格差問題が悪化すると警告。全ての国でワクチン接種が進展しなければ、新たな変異株やロックダウン(都市封鎖)の再導入が信頼感に痛手となり、経済活動が再び落ち込み、企業の破綻につながりかねないと予測した。
OECDはまた、供給逼迫(ひっぱく)などを背景にした新たなインフレリスクにも警戒感を示したものの、生産能力の正常化や消費がサービスにシフトしている状況を背景に、年末までには物価圧力は弱まると分析した。
さらに、金融市場がこうした混乱に冷静に対応できないリスクもあるとし、先進国の中央銀行に緩和策の維持と、インフレが目標に対して一時的にオーバーシュートする状況の容認を呼び掛けた。
原題:A Resurgent World Economy Is Seen Leaving Many Countries Behind (抜粋)