• 2月開始以降の接種回数は1321万回に、直近1週間で300万回以上
  • 接種自体は「過去と違いとても良い」-神戸大の岩田教授

先進国の中でも最も遅れていた国内の新型コロナウイルスワクチンの接種が東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、過去2週間で大幅に加速している。

  ブルームバーグのデータによると、2月にワクチン接種を開始して以降、接種回数は1321万回となり、7日間平均はこの2週間で4倍に増えた。特に過去1週間内に300万回以上が接種され、接種スピードの加速がうかがえる。1日当たりの接種回数は現在40万-50万回に増え、欧州連合(EU)が4月に行っていたペースと似た水準に達している。

  国内のワクチン接種について批判的だった専門家も、足下の動きを好意的に受け止めている。昨年に豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号の感染対処に当たり、過去に日本のワクチン接種のスピードは途上国並みだとコメントしていた神戸大学の岩田健太郎教授(感染症内科)は、「ワクチン接種自体については過去と違いとても良い」と述べた。

  5月21日に政府が米モデルナと英アストラゼネカのワクチンを承認したほか、同24日から東京と大阪で自衛隊による大規模接種会場の運営が始まったことも接種スピードの加速を後押しした。

収束への切り札

  菅義偉首相は5月28日の会見で、接種が先行する他国で効果を発揮していることから「感染を防止し、収束へ向かわせる切り札がワクチン」だと強調。6月中旬以降は1日100万回の接種を可能にする体制を整える考えを示した。

  日本では現在、医療従事者と65歳以上の高齢者向けの先行接種が行われている。約1万1000人のコロナ関連死亡者の96%が60歳以上(5月26日時点)。少子高齢化が進む日本の実情に照らしても、高齢者に対する早期の接種完了が待たれる状況だ。

  約3500万人の65歳以上人口のうち、これまでに約14%が少なくとも1回のワクチン接種を受けた。政府は65歳以上の高齢者接種について、7月末までに終える目標を掲げている。SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストと関口直人氏はリポートで、65歳以上への接種完了は標準的ケースで7月中旬、保守的ケースで8月中と予想した。

  一方、東京オリンピックは7月23日に開会する予定だ。菅首相は、観客を入れての開催に「対応することはできる」との認識を示している。

接種手法に広がり、一段加速も

  今後ワクチン接種のスピードがさらに加速する可能性もある。加藤勝信官房長官は1日の記者会見で、職場でのワクチン接種について今月21日に開始することを明らかにした。FNNは、「夜の街」での新型コロナの感染拡大を防ぐため、歓楽街関係者を対象としたワクチンの集団接種を行う案が政府内で浮上していると伝えた。

  民間企業もワクチン接種を後押しし始めている。楽天グループは神戸市などと連携し、5月31日から「ノエビアスタジアム神戸」でワクチンの大規模接種を開始。トヨタ自動車の地元の愛知県豊田市では、75歳以上の高齢者を対象にした集団接種が同30日から始まり、「トヨタ生産方式」のノウハウを活用した効率的な会場運営に取り組んでいるとNHKが報じた。

  田村憲久厚生労働相は5月30日のフジテレビの報道番組で、65歳以上の高齢者接種について「1回目を打てば2回目は予約を入れていただくので、(終了時期が)見えてきますから、その間を空けてしまうと非常にもったいない話になる」と指摘。64歳以下にも柔軟に接種する考えを示した。

神戸市で始まった大規模接種会場(1日)