東芝は13日に臨時取締役会を開き、25日に開催する定時株主総会に諮る取締役選任案や、その後に開催する取締役会で正式に決める執行役選任案の変更を決定し、計4人が退任すると発表した。弁護士が10日に公表した調査報告書を受け、社外取締役や株主が、取締役会や経営陣の刷新を求めていた。

  発表によると取締役候補から外れ退任するのは監査委員長を務める太田順司氏のほか山内卓氏。両氏はいずれも社外取締役。そのほか、執行役に選任予定だった豊原正恭執行役副社長加茂正治執行役上席常務が退任する。

  豊原、加茂両氏の代わりに、新たに福山寛執行役員上席常務と谷尚史執行役員を執行役に選任予定とした。

  調査報告書の指摘を真摯(しんし)に受け止めるとのコメントも発表。外部の第三者の参画も得た上で徹底して真相を究明し、責任の所在を明確にするとしている。具体的なスケジュールや方法は検討中で、決まり次第公表する。

  同社の永山治取締役会議長が14日午後1時から、この決定についてオンラインで記者会見する計画も発表した。

  2020年7月の株主総会の運営を巡り、筆頭株主のエフィッシモ・キャピタル・マネジメントが選任した弁護士による調査報告書では、経済産業省と一体となって議決権行使を妨害するような行為があり総会が公正に運営されたものとは言えないと結論付けていた。

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  調査報告書では、東芝が総会でのアクティビスト(物言う株主)への対応について、経産省に支援を要請。当時社長だった車谷暢昭氏の地位を維持するため、部下の加茂氏や豊原氏がアクティビスト対策を担い同省も加担した構図が明らかになった。

  また、東芝が米ハーバード大学の基金に議決権を行使しないよう当時経産省参与だった水野弘道氏に事実上交渉を依頼したと認定。一方、東芝は監査委員会が外部弁護士を起用して調査を行ったが、東芝側が水野氏と直接コンタクトした事実や、何かしらの働きかけを依頼した事実は発見しなかったとしていた。

  東芝の社外取4人は、調査報告書が「経営陣と取締役会の一部が容認し難く、株主の利益に直接反する行動を取った」ことを示していると声明を発表。25日の総会で諮る予定だった取締役選任案も、もはや支持しないと表明していた。    

反対を推奨

  日本経済新聞の報道によると、議決権行使助言会社の米グラスルイスは、東芝の疑惑を巡る対応が不十分だったとして、同社が提案する取締役候補者全13人のうち永山氏や太田氏ら5人の選任議案への反対を推奨した。米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)も同じ5人の反対を推奨している。

  一方、シンガポールの資産運用会社、3Dインベストメント・パートナーズが永山、太田両氏を含む取締役4人の即時辞任を求めたことも明らかになった。ロイター通信が3Dインベストメントが4人に送った手紙を閲覧したとして報じた。

  エフィッシモは昨年の定時総会で議決権の扱いに不自然な点が多く存在しているなどとして、臨時株主総会の開催を請求。3月に開かれた同総会では、株主に対する圧力の有無などを追及するエフィッシモの提案が賛成多数で可決され、弁護士による調査が行われた。

  エフィッシモは昨年の定時総会では組織風土やガバナンスの問題解決のため、創業者の今井陽一郎氏ら3人を取締役として提案したが否決されていた。一方、車谷氏の賛成票も57.2%にとどまっていた。車谷氏は4月に辞任した。

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