[24日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)の政策当局者らは、経済支援策の縮小開始時期やその方法を巡り議論を始めているものの、より大きなリスクとなるのは大幅な雇用不足なのか、それともインフレショックなのかについて見解が分かれている。

ダラス地区連銀のカプラン総裁とセントルイス地区連銀のブラード総裁は24日、他の当局者の想定よりもインフレ高進が長期化する可能性があると警告。ブラード総裁は、秋に学校の対面授業が再開され、他国でも経済活動の再開が進むにつれ、インフレ率が予想を超えて上昇する「具体的なリスク」が存在しているとし、「政策担当者は今後、こうした新たなリスクを考慮する必要がある」と述べた。

また、カプラン総裁は需給の不均衡が予想以上に長期化する可能性があるため、今年3.4%、来年2.4%のインフレ率予想には「上振れリスク」があると指摘。今後の様々なインフレリスクを管理するために、FRBは月額1200億ドルの資産買い入れを減額することで経済への支援を「遅かれ早かれ」縮小すべきとした。

両氏ともFRBは来年にも利上げを開始すべきとの見方を示している。

一方、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁とフィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁は、労働市場の回復にはまだ時間がかかると強調。ウィリアムズ総裁はオンラインイベントで、「経済がより完全に回復すれば、低金利政策を解除し、政策金利を正常な水準に戻すことができる。ただ、経済は完全雇用に程遠いため、まだその時期に達していない」と述べた。

ハーカー総裁は、米国の雇用はパンデミック(世界的大流行)前の傾向を維持していた場合と比較して約1060万人分少ないと指摘した。

両氏とも、利上げ時期について言及していないが、FRB当局者の大半は23年の利上げ開始を見込んでいる。

パウエル議長はインフレ高進が一過性であり、学校の再開や新型コロナ感染を巡る懸念後退により多くの米国人が職場に復帰し、供給のボトルネック解消に向け企業が生産を増やすことでインフレ率が低下すると主張している。

ただ、一部の政策当局者は懐疑的だ。カプラン総裁パンデミック発生以降に退職した55歳以上の米国人は250万人超に上るとし、復職する人がどれだけいるかは不明と指摘。育児や介護などで仕事を辞めた人も150万人に達する中、雇用に「大きな穴」が生じているにもかかわらず、労働市場は5.8%の失業率が示すよりも逼迫している可能性があるとした。