[東京 29日 ロイター] – 日立製作所の小島啓二新社長はロイターなどとのインタビューで、経済安全保障への対応が次期中期経営計画の課題になるとし、リスク管理の強化をひとつの柱にする考えを示した。同時に「次は成長の10年」と位置づけ、純利益や1株利益の水準引き上げを目指すという。
小島社長は、同社が保有する多くの資産や技術といった「重要なリソースは経済安保的な観点で考えないといけない。どういったリスクがあるか、問題が発生したらどう影響を受けるか、どの程度の余力があるかといった観点で管理していく。次期中計の大きなテーマのひとつになる」と語った。日立は来年度から始まる3カ年の次期中計を策定中で、来春発表する。
経済力や軍事力で急速に台頭する中国と、警戒を強める米国の対立は先鋭化し、通商摩擦が拡大。米国は安保上の脅威を理由に、一部中国企業への輸出を規制し、そのサプラチェーン(供給網)に組み込まれた各国企業の製品が影響を受けている。昨秋に上場を予定していた日本の半導体大手キオクシアは、米中摩擦の影響で業績悪化懸念が強まるなどして延期した。
小島社長は、すでに「(社内の)米中間でどのくらい物を動かしているかといったことは把握している。経営に大きなインパクトを与えないよう、常にコントロールしていく」と話した。
小島社長は同時に、傘下のシンクタンク日立総合計画研究所を、当局との対話窓口と位置づける考えも示した。経済安保政策下では国と経済界、個別企業の連携が従来以上に密接とならざるを得ず、政治と企業の距離感に変化が生じる可能性が高いとにらむ。
「当局と直接対話するところを、日立本体の中に置くのはリスクがある。まだ議論中だが(意思決定の)監査もできるような組織をワンクッション置くような形にしたい」という。
<「次は成長の10年」>
82年に入社した小島社長にとって、日立の歴史の中で、最大の転換点となったのはリーマン・ショックだったという。「(これまでのトップが)止血して回復させて、基盤を作った。次は成長の10年。その最初を自分が任されたと思っている」。
成長の焦点は純利益に当てる。東原敏昭会長は社長時代、営業利益率を注視してきたが「今後さらに成長しようと思うと、(利益水準の)絶対値が必要となる。1株利益をどう引き上げていくか、ロードマップを作りたい」。
インタビューは24日に行った。