【ブリュッセル時事】ドイツやベルギーを襲った洪水被害は、地球温暖化に伴う異常気象頻発への欧州市民の危機感を一段と高めた。気候変動対策は、環境保護政党に限らず欧州各国の主要政党でも重要政策と位置付けられつつあり、今後さらに重みを増しそうだ。

 洪水をもたらした記録的豪雨について、専門家の多くは、温暖化による大気中の水蒸気増加も背景の一つとみる。一方、北欧フィンランドの首都ヘルシンキでは6月の平均気温が観測史上最高を記録した。カナダや米国も記録的熱波に見舞われており、豪雨との関連も議論されている。

 ベルギーの気候学者ジャンパスカル・バンイペルセル氏は、北極圏の気温上昇で赤道との温度差が縮小してジェット気流が勢いを失い、低気圧が1カ所に長時間とどまるようになった可能性を指摘する。地元紙で「こうした洪水はますます頻発する」と警鐘を鳴らした。

 各国首脳も「気候変動との闘いを急ぐ必要がある」(メルケル独首相)、「(気候変動が原因と)疑う余地はない」(オランダのルッテ首相)と問題意識を強調する。

 欧州連合(EU)では欧州委員会が14日、温室効果ガス排出量を2030年までに55%削減(1990年比)する包括的な対策案を発表。ガソリン車の新車販売を35年に事実上禁じるほか、排出量に応じ企業に負担を課す「排出量取引制度」を暖房や車の燃料にも適用する方針も打ち出した。加盟国の承認可否が焦点となる。

 ただ、市民生活を直撃するリスクも伴う対策には慎重意見も多い。来春に大統領選を控えるフランスでは、反政府抗議デモ「黄色いベスト運動」復活を危惧する声もある。一方、石炭火力などへの依存度が高い中東欧諸国には急速な脱炭素化への警戒が根強い。国内外で危機感は共有できても実際の対策実行は容易ではない。