<東京の風>
混合ダブルスで金メダルを獲得した裏で、石川佳純、張本智和がシングルスで姿を消した。目標の順位までは勝ち上がれなかったが、2人の振る舞いは立派だった。
全てをかけてきた自国開催の五輪。悔し涙に明け暮れたいはずだが、気丈に振る舞い取材に応じた。28日、準々決勝で敗れた石川が五輪情報サービス(OIS)と国際卓球連盟(ITTF)のライターに中国語で質問を受けた時だった。
石川は中国語で返答後、自ら日本語に通訳して2度目の返答。自国開催のことを考え自らそうした。会場運営者は「同時通訳をつけようと思ったら自分で訳してくれて…」とその丁寧な対応に驚いた。張本も26日のOISとITTFの取材で同様に回答者と通訳の「二刀流」で対応していた。
張本は両親が中国出身で自宅では中国語を話す。一方の石川は独学で習得した。日本語より卓球用語が豊富な中国語。強くなりたいという一心だったという。
ミックスゾーンは各競技、各選手の性格が出る。コンディションを優先し、早々に切り上げる選手もいれば、スポーツの良さを伝えようと、じっくり取材に応じる選手もいる。選択は選手の自由だ。
石川と張本は後者を選択した上に、自ら通訳を買って出た。会場の片隅で起きた数分の出来事だが、日本の「おもてなし」の心が垣間見えた。【三須一紀】