国内でも主流になっている新型コロナウイルスの「デルタ株」について、国立感染症研究所が遺伝子のデータをもとにどう広がったか分析したところ、海外から首都圏に流入した1つの起点から全国に広がったとみられることがわかりました。
国立感染症研究所は、感染力の強い変異ウイルスデルタ株について、感染した人から採取したウイルスの遺伝子を解析してどう広がったか分析した結果を4日、厚生労働省の専門家会合に示しました。
それによりますと現在、全国各地に広がっているデルタ株の系統で最も初期のものは、ことし5月18日に首都圏で海外渡航歴がない人から検出されたウイルスだったと分かり、さらに調べると、これとよく似たウイルスが4月16日に空港の検疫で見つかっていたということです。
国立感染症研究所は海外から流入した1つの起点から首都圏を中心に拡大し、その後、全国規模で拡散したと推定されるとしています。
一方で、ことし5月ごろ関東や関西、中部、九州などで確認されていた、海外から流入したとみられるデルタ株のクラスターの多くは大きな感染拡大につながらず、7月初旬ごろまでにはほぼ収まったとみられるということです。
国立感染症研究所の脇田隆字所長は、「これまでの国内の流行でも、やはり1つの起点から全国に拡大していて、今回も同じことが起きている可能性がある」と話しています。
デルタ株 首都圏では感染全体のほぼ90%か
感染力が強い変異した新型コロナウイルス「デルタ株」は、首都圏ではすでに感染全体のほぼ90%、関西でも60%余りを占めるなど、急速に置き換わりが進んでいるとする推定の結果を、国立感染症研究所がまとめました。
国立感染症研究所が民間の検査会社7社の「変異株スクリーニング検査」のデータを基に、デルタ株でみられる「L452R」の変異が含まれたウイルスが、どれくらいの割合を占めているか推定した結果を4日、厚生労働省の専門家会合で示しました。
それによりますと、東京都ではデルタ株などがすでに90%、神奈川県、埼玉県、千葉県を含めた首都圏の1都3県でも89%を占め、今月下旬にはほぼすべて置き換わるとしています。
また大阪府、京都府、兵庫県の関西の2府1県では、先月上旬までは少ない状態でしたが、急速に広がって63%となっていて、今月下旬には80%を超えるとしています。
さらに沖縄県で89%、福岡県で85%などと、各地で置き換わりが進んでいて、入院患者が急増し、医療のひっ迫につながっていると指摘されています。
専門家会合の脇田隆字座長は「デルタ株は感染力が従来のウイルスの2倍程度で、従来と同じ対策を同じ程度の強さで講じても制御が困難だ。感染が急拡大している地域では人流を抑えるだけでなく、人と人との接触機会の削減を行うしかない」と話しています。